職務犯罪実行後に不正所得を隠匿した場合は単純一罪になるか、それとも併合罪になるか?

外資企業、民間企業において最もよく見られる職務犯罪は主に業務上横領罪、非国家職員収賄罪及び資金流用罪の3つである。これらの職務犯罪の既遂基準は、通常、実際に財物を取得し、または管理することである。しかし、汚職で得た金銭・物品を処理する中で、加害者が不正所得を隠匿するために他の罪を犯す可能性がある。つまり、業務上犯罪には上流犯罪と下流犯罪が存在する。

犯罪所得を隠匿・隠蔽する犯罪主体には通常、上流犯罪の主犯者は含まれず、隠匿・隠蔽行為に協力した他の者が含まれるというのが刑法学の通説である。そのため、長期にわたり、上流犯罪の犯罪者が引き続き犯罪所得及びその収益を隠匿・隠蔽する行為は、通常、犯罪者による上流犯罪の事後処理と見なされ、上流犯罪に吸収されるため、別途罪が言い渡されることや併合罪として処罰されることはない。

しかし、2021年3月より施行されている刑法改正案(十一)では上述の慣行が変更となり、マネーロンダリング罪の主体範囲が拡大された。具体的に言えば、業務上犯罪を実行する者が、その犯罪行為を隠匿・隠蔽するために犯したマネーロンダリング行為、すなわち「自己マネーロンダリング」も、マネーロンダリング罪の規制範囲に組み込まれており、上流犯罪と合わせて併合罪として処罰することができるようになった。例えば、(2022)滬0106刑初24号事件について、裁判所は調査の上、「被告人の劉氏は王氏から受け取った20万元の賄賂をATMで自身の浦発銀行口座に振り込んだ。その後、そのうちの16万元を国泰君安先物有限会社の先物取引保証金口座へ次々と振り込み、先物取引を行ったことが判明した。裁判所は、「被告人の劉氏は資金移動、投資などの手段で賄賂犯罪所得の出所と性質を隠匿・隠蔽した。業務上横領罪、マネーロンダリング罪などの併合罪として処罰し、刑事責任を追及する。」と判断した。

職務犯罪者本人のほか、その配偶者、親友、同僚などが犯罪者本人に代わり犯罪所得を隠匿・隠蔽した場合は、(1)マネーロンダリング罪、(2)犯罪所得隠匿・隠蔽罪、(3)犯罪所得収益罪の3つの罪に問われる可能性がある。

例えば、(2024)滬0115刑初298号事件の被告人の高氏は、元夫の王氏から巨額の現金を渡され、預金後に送金するよう指示を受けた。この巨額の現金が収賄によるものである可能性を認めながら、王氏に個人の銀行口座を提供し、預金後に送金することで王氏の収賄金の移動に協力した。高氏は最終的にマネーロンダリング罪と認定された。(2020)遼0103刑初212号事件では、王氏と劉氏は林氏が会社の資金を不正にだまし取ったことを知りながら、自身らが経営する2つの会社の銀行口座を利用して何度も林氏に代わり、会社が振り出した振替小切手と交換し、計3700万元余りの資金を移動させた。最終的に犯罪所得隠匿・隠蔽罪と認定された。

そのため、職務犯罪事件を処理する際は、汚職で得た金銭・物品の事後処置に下流犯罪行為が存在するか否かに注目し、関係者の刑事責任をより徹底的に追及する必要がある。