違法解雇と認定された場合、使用者は「労働契約の継続履行」を回避できるか?

アメリカのドラマでは、解雇された主人公が段ボール箱を抱えてオフィスビルを後にするシーンがよく見られる。しかし、中国では、その主人公が再び段ボール箱を抱えてオフィスに戻ってくる可能性がある。『労働契約法』第48条によると、使用者が労働契約を違法に解除または終了した場合、労働者には労働契約の継続履行を要求する権利がある。使用者が継続履行を回避できるのは、労働契約の継続履行ができない場合に限られる。この場合、使用者は2Nの賠償金を支払うことで事態を終結させることができる。もっとも、一般的に使用者としては一度、解雇の決定を下し以上、仮に違法解除と認定される場合であっても、2Nを支払い、労働者との契約継続を回避したいと考える。そのため、労働者が労働関係の回復を求めた場合、「労働契約の継続履行ができない」ことが立証できるかが、企業にとって唯一の救いの鍵となる。

従来の司法実務においては、「労働契約の継続履行ができない」とされる典型的な例は主に以下の4つパターンがある。

(1)主体が不適格である。例えば、企業破産、従業員の定年退職、契約期間満了後に法定の更新が要求されていないなど。

(2)労働者が既に他社に就職している。つまり実際に契約履行を継続する意思が認められない。実務において、当該状況について意見の対立はあるが、主流の見解は「労働契約の継続履行ができない」と判断される傾向にある。

(3)職位が廃止または代替されている。もっとも、実務において、当該状況については意見の対立が大きく、企業による職位廃止または代替の合理性に対する認定は一致していない。また、このような状況下で企業が職位変更を提案し、従業員が拒否した場合は、多くの裁判所は「労働契約の継続履行ができない」と認定する傾向にある。

(4)信頼関係の崩壊。実務において当該状況については意見の対立が最も大きい。労働関係の回復を比較的認めやすい傾向にある北京市においても、実務上の見解や注目点は必ずとも一致していない。例えば、(2023)京01民終11628号事件では、裁判所は「当事者双方はいずれも法により仲裁または訴訟手続を通じて権利を主張する権利がある。当該状況は、客観的に労働契約の継続履行が不可能になったことを意味するものではない」と判断した。(2025)京03民終16197号事件では、裁判所は「双方は長期にわたり訴訟で対立しており、信頼関係が失われているため、労働契約の履行を継続する基盤が欠く」と判断した。

『北京市高級人民法院、北京市労働人事争議仲裁委員会の労働争議事件の審理に関する解答(一)』第76条では、6つの具体的事由および「当事者間の信頼関係喪失」という原則的規定をまとめている。この6つの具体的な状況は、上述の4つを包含している。

2025年9月1日より施行されている『労働争議事件の審理における法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(二)』第16条では、「労働契約の履行を継続できない」6つの事由について次のように規定している。

No. 状況 分析
1 労働契約が仲裁または訴訟係属中に満期となり、かつ労働契約の法定更新・延長すべき事情が存在しない場合 法的根拠は、『労働契約法』第44条第1項、第42条、第45条である。主に初回の労働契約期間中に関連紛争が発生し、仲裁または訴訟係属中に契約期間が満了し、かつ女性従業員の三期(妊娠中、出産後、授乳期)、従業員の医療期間、職業病または労災といった契約延長が必要な4つの状況が存在しないことを指す。本質的には、契約を更新するか否かの企業側の選択権を尊重することにある。
2 労働者が法により基本養老保険待遇の享受を開始した場合 法的根拠は、『労働契約法』第44条第2項に規定された労働契約終了の法定状況である。注意すべき点は、従業員が法定退職年齢に達したが、養老待遇を享受できない場合は「労働契約の継続履行ができない」場合には適用されない点である。
3 使用者が破産宣告を受けたとき 法的根拠は、『労働契約法』第44条第4項に定められた労働契約終了の法定事由である。会社が事業を継続できないため、労働関係存続の客観的必要性が失われるためである。
4 使用者が解散した場合。合併又は分割による解散を除く。 法的根拠は、『労働契約法』第44条第5項に規定された労働契約終了の法定事由である。当該状況は『労働契約法』第44条第5項の状況に基づく除外対象が追加されている点には注意が必要である。つまり、使用者が法的に完全に消滅し、かつ承継者が存在しないことを確保する必要がある。
5 労働者が他の使用者と労働関係を構築しており、元使用者の業務遂行に重大な影響を及ぼした場合、又は元使用者が指摘したにもかかわらず、他の使用者との労働契約を解除しない場合 法律根拠は『労働契約法』第39条第4項である。当該状況については意見の対立が最も大きい。かつて、労働者が他社に就職した場合、通常、労働者には労働契約の履行を継続する意思がないと直接的に認定され、その結果、労働契約の継続履行が不可能であると判断されていた。この新規定は、労働者の「空白期間(注:前職を退職してから他社に就職するまでの、働いていない期間を指す。以下同様)」におけるリスクを使用者に負わせる内容である。つまり、労働者が他社に就職した場合、「労働契約の継続履行」旨の判決が下されると、労働者は自分に有利な選択をすることができる。さらに、労働者が労働契約の継続履行を選択した場合、使用者はさらに労働者の「空白期間」における労働報酬についても補償しなければならない。
6 労働契約が客観的に履行不能となるその他の状況 「当事者間の信頼関係の喪失」も当該状況に含まれるが、判断には主観的な裁量の余地を含むため、事案ごとに不確実性が高い。

使用者の立場からすると、一方的な解雇は違法解雇と認定され、さらに労働関係の回復命が下されるリスクがあるため、慎重に対処する必要がある。

まず、違法解雇と認定されるリスクを可能な限り低減するための策として、第一に、規則制度の民主的手続及び規定自体の合理性に注目する。第二に、日常的に規則制度を厳格に実施する。普段は厳格に管理をしていない企業が、解雇時に厳格な規定を持ち出したことで敗訴に至るケースが多数見られる。第三に、解雇手続を適切に行う。

次に、解雇を実施する予定がある場合は、準備不足により、後で痛手を食うことを避けるため、万が一従業員が労働関係の回復を主張した場合、労働契約を履行できない適切な理由及び関連証拠が存在するかを事前に確認・整理し、リスクの大きさを検討しておく。