『知的財産権侵害民事紛争事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する最高裁判所の解釈』が2026年5月1日より施行

『知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する最高人民法院の解釈』(法解〔2021〕4号)では、知的財産権民事事件に懲罰的賠償を適用する裁判上の要件を規定した。これは裁判官の自由裁量の基準ともいえる。2026年4月17日、最高人民法院は当該司法解釈の改正版(法釈〔2026〕7号)を公布し、2026年5月1日より施行することになった。

以下、法釈〔2026〕7号の改正ポイントを簡潔に紹介する。

  1. 知的財産権侵害の故意に関する認定

旧司法解釈第三条では、「故意」について5つの具体的な状況及び「その他」の条項について定めた。法釈〔2026〕7号第六条では、2つの状況が新たに追加された:(1)原告と和解し、権利侵害行為の停止に同意した後、同一または類似の権利侵害行為を再度実施した場合。(2)関連会社の設立、法定代表者や支配株主の変更、名義を隠し会社を設立するなどし、実質的な支配関係を隠蔽し、または免責協議書を締結することにより、係争中の知的財産権侵害による法的責任を逃れようとする場合。

又、法釈〔2026〕7号では一部の状況について微調整を行った。具体的には:(1)原告または利害関係者が被告に対して権利侵害の通知を出すよう要求する場合について、「有効な通知」のみに限定した。これは原告または利害関係者が「無効な通知」を利用して被告に不利な結果を「招く」ことを避けることが目的である。例えば、通知が被告の登録住所に郵送されたが、被告は受け取らなかった。つまり、被告が他人の権利を侵害したことを認識していない可能性がある場合など。(2)被告またはその法定代表者、管理人と原告や利害関係者の法定代表者、管理人、実質的支配者が同一である状況において、「関係者は侵害された知的財産権を知っている、または知り得た」という主観的な認定要件を追加した。(3)「海賊版、登録商標を偽る」に加えて、「他人の特許を偽る」という状況を追加した。

  1. 「情状が深刻である」に関する認定

旧司法解释第四条では、「情状が深刻である」と認定する状況について、6つの具体的な状況及び「その他」の条項を定めた。法釈〔2026〕7号第七条では当該規定を踏襲しつつ、一部の状況について具体的な詳細規定を追加した。(1)「知的財産権侵害を業とする」の認定基準は、権利侵害行為を主力事業とするか、または権利侵害による利益を主要な収益源とする。(2)「情状が深刻である」と見做す前提を「保全裁定の履行を拒否する」こととするのは正当な理由がない。(3)「権利者の被った損害が甚大である」とは、権利者の信用、市場シェアなどが深刻に損なわれた状況を含む。(4)「権利侵害行為が国家の安全や公共の利益を害するおそれがある」という規定を保留とし、「権利侵害行為が人身の健康を害するおそれがある」という規定を削除した。

  1. 懲罰的損害賠償の算定式

旧司法解釈では、実際の損失、権利侵害による利益、ライセンス料の倍数を基数とすることを定めているが、営業利益と販売利益を区別しておらず、法定賠償額を基数とすることを認めている。法釈〔2026〕7号では、権利侵害による利益は営業利益に基づいて算定すること、権利侵害を業とする場合は販売利益に基づいて算定すること、利益率が確定できない場合は統計部門/業界協会の同期同業界平均利益率または権利者の利益率を参照できること、法定賠償額は懲罰的賠償の算定基礎としてはならないことを定めた。

旧司法解釈では、同一の権利侵害行為に対して既に過料や罰金が科され、かつ執行が完了した場合は、被告の申請により、裁判所が懲罰的賠償の倍率を決定する際にこれを考慮できることを定めた。法釈〔2026〕7号では被告の申請という手続的要件を削除し、裁判所が職権に基づき考慮するべきであると定めた。