『人工知能関連紛争事件の法に基づく審理に関する最高人民法院の意見』が2026年9月7日に公布施行され
AIの発展は極めて急速に進み、仕事や生活のあらゆる側面に浸透してきている。AI関連の案件数は増加の一途をたどり、その類型も多岐にわたっている。最高人民法院は2026年9月7日、『人工知能関連紛争事件の法に基づく審理に関する最高人民法院の意見』(法発〔2026〕10号)を公布して施行している。
以下、当該意見の重要条項について分析する。
1、権利侵害責任の帰責規則
『民法典』第1165条によると、権利侵害責任の認定は、行為者に過失があったことの証明を前提とする。ただし、法律では、立証責任の転換を明確に規定している場合はこの限りではない。AIによる権利侵害行為において、AIの誤作動による結果から、行為者に過失があったと認定できるか否かを判断し難いことを考慮し、法発〔2026〕10号」第二条第三項には「……行為者の過失の有無及びその程度を判断するにあたっては、人工知能応用の具体的な場面、自主化の程度、技術・情報の透明性、潜在的リスクと影響範囲、人工知能の開発者と提供者等の関連主体が人工知能による権利侵害を予防・軽減するために講じた措置及び技術上の可能性、並びに人工知能技術を利用して実施する権利侵害行為によって生じうる損害に対する人工知能のユーザーの予見能力及び制御能力等の要素を総合的に考慮する。」と規定している。
したがって、製造企業はAI搭載のロボットアームやロボットによる作業を導入する場合、当該設備が他の作業関係者やオペレーター等に及ぼしうる損害を予見・制御する能力を有しているか否か、有効な予見・制御措置を講じているか否かが、今後の重点的な考慮すべき要素となる。
2、AIによる著作権侵害
過去数年間、AIが生成した情報が著作権侵害になるか否かについては、意見が一致しない。法発〔2026〕10号では統一的な結論を示していないものの、著作権侵害事件を審理する際に裁判所が考慮すべき要素、および各当事者の具体的な立証責任を示している。法発〔2026〕10号第三条第(十二)項には、「……人民法院は、人工知能サービスの類型、業界の特性、学習データの出所、各当事者の関与度、講じられた必要な措置、利益状況等の要素を総合的に考慮し、AIの開発者、提供者、ユーザーの責任を法により合理的に認定する。AIの開発者が非侵害の抗弁を申し立てる場合、非侵害を裏付けるために、人民法院はAIの開発者に学習データの出所、学習過程の記録、モデルの動作モード、および科学的理論的根拠等を提出するよう命じる。権利者は、AIの提供者がアルゴリズム技術を利用して権利者の著作権を侵害したと主張する場合、関連証拠を提出する。……」と規定している。
3、AIを活用して創出された発明に係る特許権の付与及び権利確定
AIは単なるツールなのか、それとも創造性を備えた「第二の脳」なのか?法発〔2026〕10号では前者を認める傾向であることを示している。第三条第(十四)項には、「人工知能に係る発明創造が、自然法則に従う技術的手段を用いて技術的課題を解決し、自然法則に合致する技術的効果を実現した場合、人民法院は法により、これを特許法による保護を受ける客体と認定する。ただし、法律、社会公徳に違反し、公共の利益を損なう場合、または自然人の実質的な貢献がない場合はこの限りではない。」と規定している。
このことから、将来、AIによる発明創造に係る特許紛争においては、自然人の実質的な貢献の有無が重要な争点となる。企業の研究開発部署がAIを活用する際に、研究開発者の研究開発への実質的に貢献し、特にその着想や方向性に関する証拠を確実に保存しておくことを勧める。また、AIの利用によるコストも研究開発費として計上する。そうしておくと、技術秘密侵害又は特許権侵害が発生した場合、損害額を立証する上で有利に働く。
法発〔2026〕10号では、AIデータの利用、技術契約における違約責任、消費者権益の侵害など10点以上の争点について分析・説明しており、注目に値する。