相手方の軽微な契約違反を理由に、契約を解除することは可能か
『民法典』第562条第2項には、「当事者は当事者一方による契約解除の事由を約定することができる。契約解除の事由が発生したとき、解除権者は契約を解除することができる。」と規定している。同規定は、当事者が解除事由をあらかじめ約定することを認めており、私法自治という核心的価値を体現している。しかしながら、一部の当事者は相手方の些細な過失を理由に契約を解除することがあり、契約の安定性を損なうことも少なくない。
このため、2019年の『全国法院民商事審判工作会議紀要』(法〔2019〕254号)第47条には、「契約に定められた解除条件が満たされ、違反のない当事者がこれを理由に契約の解除を請求する場合、人民法院は、契約違反を犯した当事者の違反の程度が著しく軽微なものではないか、違反のない当事者の契約目的の達成に影響を及ぼすものかを審査し、信義則に基づき、契約を解除すべきか否かを判断する。……」と規定している。このことから、司法実務において、裁判所は職権に基づき当事者間で約定された契約解除事由を審査し、契約解除の要否を判断する権限がある。
司法裁判の実務から見て、契約の解除事由についての約定があり、相手方の行為がこれらの事由に該当する場合、契約をどのように取り扱うかについては、以下の手順に沿って判断するとよい。
まず、契約解除の可否を確認する。司法裁判の判断基準はこの点において変化が見られる。
前述の2019年『全国法院民商事審判工作会議紀要』(法〔2019〕254号)第47条は、契約解除の可否を判断する主要な根拠とされたことがある。
2023年12月5日に施行されている『〈中華人民共和国民法典〉契約編通則の適用における若干問題に関する最高人民法院の解釈』(法釈〔2023〕13号)第26条には、「契約に違反した当事者が約定通りに主たる債務以外の債務を履行せず、契約を遵守した当事者が契約解除を申し出た場合、裁判所はこれを認めない。ただし、当該債務の不履行が契約目的の達成を不可能にする場合、または当事者間に別段の定めがある場合はこの限りではない。」と規定している。この司法解釈が公布されてから、軽微な債務不履行が契約解除権の行使を妨げるものではないという見解が再燃した。
2024年、北京市高級人民法院研究室は最高人民法院研究室民事処に対し、「軽微な違約の状況下で当事者は契約解除権を行使する権利があるか否か」という問題を提起した。最高人民法院は、契約解除権の行使にあたり考慮すべき要素を何点か指摘した。具体的には、1、違約者の過失の程度。民法典は厳格責任の原則を堅持し、違約の認定において過失を考慮しないが、これは契約法において過失が無意味であるということを意味するものではない。違約者が軽微な過失を犯した、又は過失が全くない場合は、通常、契約解除の主張を認めることは適切ではない。2、違約行為の形態。契約義務は性質に応じて主たる契約義務、従たる契約義務、付随義務に分けられる。従たる契約義務、特に付随義務の違反について、契約を遵守する当事者の契約解除請求を認めるか否かを慎重に判断すべきである。3、違約行為の結果。軽微な履行遅滞、継続的契約の履行過程における偶発的な違約などは、違約の程度として著しく軽微であり、違約があっても、契約を遵守した当事者の契約目的の実現に影響を及ぼさない。解除権の行使を認める場合、軽微な違反を犯した当事者のこれまでの多大な投資は回収不能となり、利益の著しい不均衡を引き起こす可能性がある。4、他の救済措置を考慮する可能性。契約解除は違約に対する唯一の手段ではなく、当然の手段でもない。著しく軽微な違約は違約者の違約責任を免れることができない。契約を遵守する当事者の損失について、違約責任を負う(通常は損害賠償)方法で救済でき、かつ直接の契約解除よりも公平性を実現するうえで適切である場合は、契約を遵守する当事者の解除権を制限することが考えられる。
前述の最高人民法院の回答から、基本的には「法〔2019〕254号」の趣旨、すなわち、軽微な契約違反に係る諸般の事情を総合的に考慮した上で判断する必要があるという点に立ち返っている。
次に、四つの要素を考慮した上で契約解除が可能であると認められる場合、契約解除権を行使する。逆に、契約を遵守する当事者は状況に応じて、履行を継続して違約責任を追及するか、契約の一部を解除して違約責任を追及するか選択することができる。
以上のことから、当事者の立場からすれば、契約解除事由をあらかじめ約定しておくことが重要である。少なくとも契約当事者に約定を遵守させる有効な手段となり得るからである。また相手方が実際に契約に違反した場合は、解除権の行使は不確実性が伴うが、契約解除事由の約定を拠り所とすることができる。