「客観的状況に重大な変化が生じた」の認定基準の変化
『労働契約法』第40条第3項には、「労働契約締結時に依拠した客観的状況に重大な変化が生じ、労働契約の履行が不能となり、使用者と労働者が協議したが、労働契約の内容変更について合意に至らなかった場合、使用者は30日前までに書面により労働者本人に通知するか、または労働者に1か月分の賃金を別途支給した後、労働契約を解除することができる。」と規定している。ただし、「客観的状況に重大な変化が生じた」ことをいかに定義するかは実務上の難点となっている。使用者はこの条文に基づいた労働契約解除に対して不安を抱えることが多い。
初期のほとんどの判決は、『〈労働法〉の若干条文に関する説明』(労弁発〔1994〕289号)(以下『289号文』という)第26条の規定に基づき、「客観的状況とは、不可抗力の発生、または契約の全部もしくは一部の条項の履行不能を招く他の状況を指す。例えば、企業の移転、合併、資産の移転など。」として判断してきた。
時間が経過に伴い、中国が内資・外資に対して完全国民待遇を設定した1994年と比較して、国内外の経済環境は非常に大きな変化を遂げている。各地では、「客観的状況に重大な変化が生じた」ことの認定基準を相対的に緩和している。
『労働争議事件の審理に関する北京市高級人民法院、北京市労働人事争議仲裁委員会の解答(一)」(京高法発〔2024〕534号)第79条には、「労働契約締結時に依拠した客観的状況に重大な変化が生じた」とは、労働契約締結後、使用者と労働者が契約締結時に予見できなかった変化が発生し、双方で締結された労働契約の全部または主要な条項が履行不能となるか、または履行を継続した場合のコストが過大となるなど著しく公平を失する状况が生じ、労働契約の目的の達成が困難となることを指す。」と規定している。また、同条では、会社の事業転換、制度改革、フランチャイズ運営企業の経営範囲の変化など、「客観的状況に重大な変化が生じた」ことに該当する状況を列挙している。ただし、全体として見ると、北京の裁判実務の考え方は比較的保守的であり、「客観的状況に重大な変化が生じた」と安易に認定する傾向にはない。
上海では明確な規定は公布されていないが、2020年以降、司法判断の基準には一定の変化も見られる。一部の事件では、裁判所の判断基準は労弁発〔1994〕289号文の規定の枠を超えるものとなっている。例えば、(2021)滬01民終15455号事件において、裁判所は、「『289号文』に列挙された事由はあくまで例示であり、排他的なものではない。使用者が市場環境、国際競争、技術革新等の影響により組織体制の調整、または変更を行う必要が生じた場合も、客観的状況の重大な変化に該当し得る。」と判断した。ただし、全体的には依然として比較的保守的である。
しかし、2025年の年末以降、司法実務の判断基準はさらに緩和する傾向を示しており、部署の廃止や統合等について、単なる経営判断にとどまらない事由がある場合には、客観的状況の重大な変化に該当すると認められる例が増えている。つまり、経済環境の悪化や企業の経営困難等による企業の組織体制の調整や賃金変更など、労働契約の内容変更を伴う措置については、司法機関に認められる可能性が相対的に高まっているといえる。
特に留意すべき点としては、客観的状況の重大な変化を理由とする場合であっても、変更について協議したが合意に至らなかったという要件は満たさなければならない。また、協議により変更した後の職位および関連条件は実行可能性と合理性を備えていなければならない。