企業基準の届出が必要であるか
ある製品品質紛争事件において、関連契約では、目的物の品質基準について売り主の企業基準に準ずることを約定していたが、売り主であるA社は一部の機械設備において企業基準又は相応の使用説明書を買い主の劉さんに提供せず、ラベルと実物が一致しない事態が発生した。そのためラベルに表示された実行基準が設備品質の評価基準とすることができなくなった。最終的に裁判所は、「事件に関わる機械設備が企業基準に合致するというA社の抗弁は根拠となる事実がない」と認定し、採納しなかった(詳細は(2020)浙01民終2569号事件をご参照ください)。
品質基準は売買契約によく見られる条項であり、通常、当事者は国家基準、業界基準、地方基準、企業基準の中の一つまたは複数を約定する。企業基準は各企業が自主的に制定する。企業基準を品質評価基準とする前提は、買い主が企業基準の内容を知っていることを売り主が証明しなければならないということである。売り主はどのように証明すれば良いのだろうか?直接開示すればよいだけなのか、それとも届出を行わなければならないのだろうか?
食品や医薬品などの特殊業界については、強制的監督管理が行われているため、企業基準は強制的監督管理の範疇に含まれている。他の業界については、企業基準届出に対する国の要求があるか否か、どのような要求があるかを検討する必要がある。
企業基準届出制度は1990年の『企業基準化管理方法』から始まったものである。しかし、ほとんどの企業が届出手続きを行っていない。その原因は大まかに2つあり、1つは、届出手続きが煩雑であること、もう一つは、届出することは、企業基準での技術パラメータ、指標、原材料などが公開され、営業秘密の漏洩をもたらす可能性があることを意味するからだ。又、市場監督管理において事前から事後への移行に合わせて、2015年に国務院が企業基準届出を段階的に廃止するという改革案を提出したことから、2019年の『基準化法』で届出制度が廃止され、代わりに「自己声明の公開と監督制度」が導入された。
では、企業は「自己声明の公開と監督制度」を如何に実行すればよいのだろうか?
『企業基準化促進弁法』第14条には、「国は企業基準の自己声明公開と監督制度」を実施する。企業は、製品やサービスを提供するために実施する強行基準、推奨基準、団体基準または企業基準の番号と名称を公開しなければならない。企業は自ら制定し、または共同で制定した企業基準を執行する場合、製品やサービスの機能指標、製品の性能指標および相応の試験方法、検査方法または評価方法を公開しなければならない。……企業が公開した機能指標と性能指標の項目が推奨基準より少ないか又は低い場合は、自己声明の公開時にそれを明示しなければならない……」と規定している。
『企業基準化促進弁法』第16条には、「国は、企業が国家統一の企業基準情報公共サービスプラットフォームを通じて自己声明の公開を行うことを奨励するが、企業が他のルートを通じて公開することも認める。但し、公共サービスプラットフォームで公開ルートを明示しなければならない。」と規定している。
又、同弁法第30条には、「企業が企業基準を公開しない場合、県レベル以上の人民政府基準化行政主管部門は期限付き是正を命じる。期限を過ぎても是正が見られない場合は、企業基準情報公共サービスプラットフォームで公示する。」と規定している。
以上のことから:
まず、自己声明の公開は法定義務であり、違反した者は期限付き是正を命じられるリスクがある。
次に、現行の規定では、企業基準の自己声明の公開について、営業秘密保護の必要性を考慮し、公開の範囲を画定しているが、企業基準の公開方法については制限されていない。
そのため、企業は公共サービスプラットフォームを通じて企業基準を公開することも、他の方法で公開することもできる。つまり、法定義務を履行する立場においても、品質紛争について立証不能を回避する立場においても、売り主である企業は買い主に企業基準を提供しなければならない。