倉庫賃貸借契約と倉庫寄託契約の違い

    表題を見ると、「両方とも倉庫を借りて物品を置くことを意味し、ほとんど区別がつかない」と考える人がいるだろうが、実はそうではない。法的性質において、倉庫賃貸借契約と倉庫寄託契約は、別物で、契約双方の権利義務、違約責任、抗弁事由なども異なる。

    倉庫賃貸借契約と倉庫寄託契約はそれぞれ『契約法』第13章、第20章でいう有名契約に該当する。倉庫賃貸借契約のキーポイントは、賃貸人が賃借人に倉庫を引き渡し、賃借人が当該倉庫を使用し、その対価として、倉庫の占有・使用に関わる賃借料を支払う。倉庫寄託契約のキーポイントは、寄託者が貨物を受寄者に引き渡し、受寄者が当該貨物を倉庫に預け、寄託者が貨物の貯蔵、管理について倉庫保管料(通常、保管費、入出庫料金及び他の費用を含む)を対価として支払う。 

    上記の根本的な差異によって、権利責任の設定時にそれぞれ考慮すべき要素も異なる。

    倉庫賃貸借契約において、賃貸人は倉庫が約定通りの用途に合致することを確保し、賃借人は自ら倉庫を使用し、貨物を貯蔵・管理する。賃貸借期間満了後、賃借人は倉庫を返却しなければならず、双方間に別途約定がある場合を除き、原状回復の義務を負う。賃貸借期間が不明確である場合は、賃借人は随時、賃貸借関係を解除することができる。実務においては、賃貸借期間満了後も契約を更新せず、倉庫を継続して使用るケースはよくある。この場合、賃貸人は往々に1か月又は数か月の賃借料を主張し、さらに賃借人の貨物を留置し、留置期間の賃借料の支払を主張するが、通常裁判所に認められない。賃貸借契約において留置権が存在する余地はないからである。但し、その場合、賃借人は以下の2点を証明する必要がある。①契約解除の通知義務を履行した。②倉庫を返却した(通常倉庫の鍵を返したことを証明できる証拠を提出する)。

    倉庫寄託契約において、受寄者は貨物に対して善管注意義務を負い、貨物の損害が発生した場合、相応の賠償責任を負う。特に危険品を保管する場合、受寄者は必要な資格を備え、保管条件を満たさなければならない。従って、契約締結前に寄託者は、受寄者が必要な資格を備え、保管条件を満たしているか否かを慎重に確認するとともに、契約締結後は受寄者の資格などの変化に注意を払うべきである。受寄者には2つの特殊な権利がある。(1)留置権。寄託者が約定通りに保管料及び他の費用を支払わない場合に、受寄者は貨物を留置できる。但し、当事者の約定により留置権は排除される。(2)処置権。催告を受けた後に寄託者が期間を超えて貨物を受け取らない場合に、受寄者は貨物をエスクロ機関に交付し、又は必要に応じて先行措置を取るすることができる。

    司法実務において、賃貸借契約に係る紛争は民事法廷による管轄を受け、倉庫寄託契約に係る紛争は商事法廷による管轄を受ける。民事法廷の場合、裁判前の調停手続があるので、契約条項に曖昧、又不利な約定があるので、当事者は裁判前の調停により解決を求める場合は、意識的に賃貸借契約に係る紛争として立件することができる。当然、調停により解決できない場合は、審理において倉庫寄託契約に係る紛争としての扱いに転換される可能性は排除されない。