従業員の兼業について、会社はどこまで関与できるか
判例1:A社の従業員である蒋氏はA社に無断で他社の株式を保有し、監査役に就任していた。A社は、この行為は会社の管理規定違反に該当するとして労働契約を解除した。第一審裁判所と第二審裁判所はいずれもA社の解約決定を認めた。【(2021)蘇06民終4333号】
判例2:B社の従業員である郭氏は他社で監査役を務めていた。B社は、郭氏が兼業禁止規定に違反したとして労働契約を解除した。裁判所は最終的にB社による解約を違法と認定した。【(2025)津0319民初34290号】
両判例とも監査役を務めていたことを理由に解雇されたのにもかかわらず、なぜ判決がこれほど異なるのだろうか。
この問題は少々複雑である。大まかに言うと、従業員の兼業について、使用者は主に二つの視点から規制をかけることができる。一つ目は人事管理である。『労働契約法』および労働に係る規則制度を通じて、一部の兼業行為を規制するというものである。もう一つはコンプライアンス管理である。利益相反を防ぐための仕組みを構築することによって、一部の兼業行為、あるいは兼業ではないが、会社の利益と相反する、または相反し得る行為を規制するというものである。
人事管理の視点について、『労働契約法』第39条第4号では、従業員の兼業行為に対して制限を設けている。具体的には、「従業員が他社と労働関係を構築し、それが自社での業務遂行に著しく支障をきたしている場合、または会社から是正を求められたにもかかわらず改善しない場合」は、会社は労働契約を解除することができる。当該規定から、兼業をしている従業員を解雇するには、2つの前提条件を満たす必要があることがわかる。第一に、従業員が二重に労働関係を構築していること。第二に、その行為が「本業に著しく支障をきたす」程度に達しているか、あるいは「会社からの是正要求に応じない」ことである。したがって、従業員が勤務時間後に配車アプリ「滴滴(ディディ)」の運転手として働いたり、翻訳の副業をしたりするようなケースは、先述の規定の1つ目の前提条件を満たさないため、これを理由に労働契約を解除することはできない。
実務上、就業規則や労働契約において兼業禁止を定め、それに基づき『労働契約法』第39条第2号(労働者が使用者の就業規則に著しく違反した場合)を根拠とし、解雇処分を行う企業が散見されます。
ただし、会社は従業員の業務外の行動にみだりに介入することは許されず、正当かつ合理的な理由が必要であるという点には注意が必要だ。また、第39条第4号では、従業員の兼業行為に対する制限について、2つの観点からその範囲を明確にしているため、規則制度や労働契約における兼業に関する規制は、同第4号を基礎とし、適度な範囲でのみ解釈を拡大することしかできない(総じていえば、解釈の度合いが大きくなればそれに比例してリスクも増す)。そのため実務においては以下の2点に特に留意すべきである。
第一、「画一的に」兼業を禁止するような規定はリスクが極めて高く、避けなければならない。「許可を得ることなく兼業する場合、直ちに解雇する」と直接的に規定すると、裁判所は、労働契約法第39条第4号で定められた「業務遂行に著しく支障をきたす」および「是正を求められたにもかかわらず改善しない場合」という実質的要件を排除しているものとみなされ、当該規定の合理性が否定される可能性が高い。
第二に、具体的な規定を設けるときに、『労働契約法』第39条第4号の2つ目の前提条件をそのまま維持し、1つ目の前提条件を適度に拡大解釈することが望ましい。具体的には、「他社で法定代表者、取締役、高級管理職、監査役を務めること、またはその他の業務に従事すること」を規制対象とすることを検討するとよい。また工場型企業で、配車アプリ「滴滴(ディディ)」の運転手やフードデリバリーの配達員として働くケースが目立つ場合は、「配車アプリ「滴滴(ディディ)」の運転手やフードデリバリー配達員など、社会通念上、本業に支障をきたすと認められる業務活動に従事する」ことを規制の範囲に含めることも可能である。ただし、この場合、労働契約解除という処分のみを定めると、個別事案に対処する際に困難な状況に陥る可能性がある。
さらに、規則制度に定めた規定を個別事案ごとに如何に適用させるかは極めて重要である。以下の二点から検討することを提案する。
第一に、「所属組織の業務遂行に著しく支障をきたすか否か」という個別の判断に注目する。司法機関は個別事案を処理する際、単に「役職や肩書」だけでなく、従業員が実際に労働を提供しているか、職務を遂行しているか、本業との間に現実的または潜在的な利益相反が存在するかなど実質的な側面をより重視する。司法実務では、この点について統一的な規則はないが、概ね以下の通りである。
| 状況 | 傾向 |
| 単純株主(出資のみを行い、役職に就かず、経営に関与せず、報酬も受け取らない) | 原則として兼業にあたらないと判断される。直ちに解雇処分を行うには、リスクが非常に高い。 |
| 法定代表者、取締役、高級管理職 | 法定代表者や取締役と会社の間に労働関係が当然に成立するのではなく、通常、委任・信頼関係が成立すると見做される。実際に職務を遂行し、意思決定に関与する必要があるので、司法実務上、規定違反に該当する兼業と認められる可能性が比較的高い。但し、解雇できるかについてはケースバイケースで審査する必要がある。特に高級管理職を務めている場合は、実際の職務遂行が必要であると認定されやすい。 |
| 監査役 | 主に取締役会及び高級管理職への監督、財務状況の精査を担う。会社との間に役務提供関係/任命関係が存在すると見なされる事例もあるが、議論が多い。したがって、実際の職務遂行の有無、報酬の受領状況、競合の有無、本業への影響などを総合的に勘案した上で判断するのが一般的である。 |
冒頭の判例1において、財務担当者である蒋氏は他の記帳代行会社の持分を保有し、監査役を務めていた。裁判所は、「従業員としての忠実義務に違反し、信義誠実の原則に反する。また、A社における常勤の財務担当者である一方、記帳代行等を経営範囲とする他社で監査役・株主を務めることは、時間、労力、業務内容等の面で必然的に本業に支障をきたす」と判断し、最終的にA社による解雇を認めた。冒頭の判例2において、裁判所は「既存の証拠は、原告の業務に著しく支障を及ぼしたとは認められない」とし、解雇の理由が十分かつ合理的であるとは認めなかった。
第二、処分措置は具体的な違反情状に見合ったものでなければならない。違反の程度が軽微である、または証拠が不十分な場合は、教育の実施を優先し行い、期限を定めて是正を求め、その結果に応じて相応の処分を下すべきである。例えば、(2016)浙0603民初10087号事件において、会社の規則制度で兼業を禁止されている従業員が、KFCでアルバイトをし、会社から辞めるよう複数回要求されたにもかかわらず、それに応じず、さらに証人の証言から、当該兼業は本業に支障をきたしていたことが明らかになったため、最終的に裁判所は解雇を適法と認定した。
コンプライアンス管理の観点において、使用者は利益相反を防止する仕組みを構築する際に、主に会社と競合する行為(主に販売関連)及び、自身の影響力を利用して会社との取引に干渉する行為(主に購買関連)という二つの利益相反行為を禁止対象に含める必要がある。又、利益相反に関する申告制度を設け、申告の対象、申告が必要な状況、申告期限などを明確にするとともに、「申告規定に違反した場合は、会社は相応の処分を行う」と定めておくとよい。具体的な規則は、業界の特性やビジネスモデル等に応じて設計し、就業規則での罰則と整合性のとれるものである必要がある。