電子契約の「契約締結地」はどのように認定されるか

電子情報技術の発展に伴い、ビジネス活動において電子契約がますます広がっている。一部の電子契約には「契約締結地の人民法院が管轄する」という約定がある。但し、電子契約はペーパーレスで、地域をまたいで締結されるという特徴がある。ではその「締結地」は如何に認定されるのだろうか。

一、約定があれば、約定に従うが、「実質的関連性がある」ことを前提とする。

『民事訴訟法』第35条によると、契約当事者は書面による合意により、被告住所地、契約履行地、契約締結地など紛争に実質的に関係のある場所の裁判所を管轄裁判所として選択することができる。従って、電子契約において締結地が明確に規定されている場合、原則として当事者の意思自治が尊重される。

但し、有効な契約締結地を約定しておかなければならない。もし約定された締結地が紛争と実質的な関係性を欠く場合は(例えば、当事者の住所地がその地になく、契約の履行がその地と無関係である場合など)、裁判所は管轄条項を無効とし、法定の管轄ルールが適用される。例えば、(2023)最高法民轄36号では、最高裁判所は、「当事者は契約が実際に杭州市で締結されたことを証明できず、また双方の住所地が杭州にないため、杭州市は紛争と実質的関連性がなく、管轄条項は無効である。」と明確に指摘した。

二、約定がない場合は、締結方法によって確定される。

具体的には以下の3つのパターンが一般的である。

(一)電子商取引プラットフォームによるショッピング:買主の所在地または納品先を契約締結地とする

『民法典』第491条によると、当事者の一方がインターネット等情報ネットワークを通じて公表した商品又はサービス情報が申込の条件に合致する場合は、相手方からの注文が正常に送信されたとき、契約が成立となる。但し、当事者に別途約定がある場合はこの限りではない。『民事訴訟法』第24条及び関連司法解釈によると、情報ネットワークを通じて締結した売買契約において、ネットワークを通じて引き渡した場合の履行地は、買主の住所地、その他の方式で引き渡した場合は、納品先を契約履行地とする。これにより、買主は自分の住所地や納品先の裁判所で訴訟を起こすことができる。

(二)双方が押印済みのスキャンを送信することにより締結する場合:受取を承諾した当事者の所在地を締結地とする

実務において、ウィーチャットやEメールなどの通信ツールを通じて、公印を押した契約書のスキャンを渡すことで契約を結ぶケースが散見される。このような手段はデータ電文形式で締結された契約に該当し、『民法典』第492条の規定が適用されるため、契約の成立地は最終的な「受取人」の所在地となる。

(2024)滬民轄終10号事件において、裁判所は「当事者の一方がウィーチャットを通じて、押印済みのスキャンを送信することは申込の条件に合致しており、相手が返送することで承諾となる。承諾の発効日はデータ電文の意思表示の発効ルールを適用し、つまり相手の指定システム(例えばウィーチャット)に登録された時に発効する。本件のB社が押印済みの契約書のスキャンをウィーチャットによりA社に送信することは申込の条件に合致しており、A社が押印済みのスキャンを返送したことは承諾を意味する。当該スキャンがB社のウィーチャットシステムに登録された時点から、承諾は発効する。民法第492条の規定により、データ電文の形式で契約を締結する場合、受取人の主な営業地、即ちB社の主な営業地は契約の成立地となる。」と認定した。

(3)電子契約締結プラットフォームを通じて順次署名する:最後の署名者の所在地が締結地となるのか?

双方が電子契約締結プラットフォーム(例えば「e籤宝」、「契約鎖」など)を通じて電子契約に順次署名する場合、契約締結地はどのように決定されるのか。

実務上さまざまな見解がある。一部の裁判所は、「最後の署名押印者の所在地を契約締結地とするべきだ」と考えている。例えば、(2023)滬0151民初369号事件において、裁判所は、「この締約方式は「契約書の形式」で契約を結ぶものであり、「最後に署名、押印又は拇印が押された場所を契約成立地とする」という規定を適用すべきである。まずA社が署名押印し、次にB社が署名押印したの。そのため最後に署名押印したB社の所在地の裁判所が管轄するべきである。」と判断した。又、地理的な締結地は存在しないと判断する裁判所もある。例えば、(2023)最高法民轄37号事件において、裁判所は「インターネット契約は地理的な締結地が存在せず、本件に係る契約はインターネット仮想空間で締結確認されたものであり、仮に契約において上海市浦東新区を締結地として約定していたとしても、上海市浦東新区は契約双方とも無関係であり、当該約定を無効と認定するべきである。」と判断した。つまり、最高裁判所は本件について、『民法典』第492条に従い契約締結地を認定したものではない。したがって、電子契約締結プラットフォームを通じて締約する場合、司法判断の不確実性に鑑み、当事者双方及び取引と関係する具体的な締約地は明確に約定しておくことが望ましい。