中国では従業員は「集会」を通じて権利を守ることができるのか

事例1ある不動産管理会社は2023年8月、繆氏ら従業員に雇用形態を労務派遣に転換することを提案したが拒否された。2023年9月初頭、同不動産管理会社は従業員研修を実施したが、繆氏らは参加を拒否し、数日連続で勤務先の集合住宅に集結し、列を作って歩き回り、スローガンを叫んだ。(詳細は(2024)滬0115民初34302号判決書を参照)

事例22016年10月25日から28日、あるエネルギー会社の従業員は工場入口の緑地に集まり、長時間にわたり工場の外で座り込みや行進を行い、通常の労働を提供しなかった。同エネルギー会社は書面による警告を掲示し、無断欠勤行為の停止及び早期の職場復帰を要求した。従業員の周氏は職場復帰を拒否し、最終的に解雇された。(詳細(2017)粤0305民初3373号判決書を参照)

上記2つの事例は、いずれも要求が満たされなかったため労働者が集結した。この行為は法律上どのように定義されるのだろうか。

まず、これらの行為は「集会、デモ」に該当するのか?

答えは「いいえ」である。

現時点で、公民の集会権、デモ権を規制する法的根拠は主に『集会デモ法』とその『実施条例』である。

『集会デモ法』第2条には、「集会とは、屋外の公共の場所に集まり、意見発表や意思表明を行う活動を指す。デモとは、公共の道路、屋外の公共の場所で列を作って行進し、共同の意思を表明する活動を指す。」と規定している。集会やデモは公共の場所や公共の道路で行われる場合に限定される。『集会デモ法』第3条によると、「屋外の公共の場所」、「公共の道路」は、それぞれ「大衆が自由に出入りできるか、またはチケットで入場できる屋外の公共の場所を指す。機関、団体、企業・事業組織が管理する内部の屋外の場所は含まない」、「機関、団体、企業・事業組織内部の専用道路を除く道路及び水路を指す」と定義されている。このことから、職場内部にある公共の場所や道路は、集会やデモの場として法律上、認められていない。 

又、規定によると、集会やデモを行う場合は公安機関に書面で申請し、許可を得なければならない。申請書には集会、デモ、示威の目的、方式、標語、スローガン、人数、車両数、ステレオ設備の種類や数量、開始・終了時間、場所(集合地と解散地を含む)、路線及び責任者の氏名、職業、住所等を明記しなければならない。違反者は治安管理処罰を受け、刑事責任を問われることもある。

そのため、労働者は自分の権益を守るために集会やデモを行うことを決定した場合、公安機関の許可を得た上で、法律規定に従い指定された場所で、平和的な方法において(武器を所有してはならない。)意思を表明する必要がある。冒頭の2つの事例の状況は明らかに規定に合致しない。

次に、この行為は「ストライキ」に該当するのか?

中国の法律では労働者にストライキ権を与えていないため、従業員がストライキを行うことは法的根拠がない。『労働組合法』第41条には、「基層労働組合委員会は会議を開くか、又は従業員活動を組織する場合、勤務時間外に行わなければならない。勤務時間に行う必要がある場合は、企業の同意を得ておかなければならない。」と規定している。『企業労働組合工作条例』第21条にも類似の規定がある。そのため、集団で使用者に対する合理的な請求がある場合、労働者は労働部門に苦情を申立て、仲裁及び訴訟を通じて救済を求めるべきである。『労働契約法』第32条に規定された「使用者の管理職による規定違反指揮と冒険作業強要命令を労働者が拒否した」場合を除き、従業員が集団で許可なく業務を停止させ、「権利を守る」ことの合法性と正当性は認められない。

冒頭の2件について、上海及び広東の裁判所は「従業員は職場に集結し、不適切な方法で権利を主張した。これは使用者の規則制度を重大に違反する行為である」として、合法的な解雇を認めた。

以上のことから、労働者は合理的な請求を表明する場合、合法的な手段を採ることを重視しなければならない。使用者は従業員が「集会」など不適切な手段で権利を主張することを予防し、またそれに対応するため、従業員の合理的な要求に常に注視し、紛争を迅速かつ適切に処理しなければならない。