「受給時支払(pay when paid)」支払条項は無効と認定される可能性はあるか?

「受給時支払(pay when paid)」支払条項は通常、法律上、上下関係にある契約に存在するものである。その特徴は、支払義務を負う当事者(中間にあたる当事者)が、自分から下流の提携者への支払義務を履行する前提条件として、上流の提携者による代金支払義務が履行済みであることだ。簡単に言うと、中間にあたる当事者には「先に受給し、後で支払いをする」ことが要求される。

このような条項は中間側にとって契約履行に伴うリスクを下げ、支払に伴うリスクをシフトするのに役立つので、建設工事施工、広告宣伝、技術サービス、大口貨物取引などの契約に広く存在している。しかし、現行の法律にはこのような条項の効力について明確に規定されていないため、個別案件においてこのような条項が有効であるか否かは一概には言えない。

司法実務において、「受給時支払(pay when paid)」条項が無効と認定される理由は主に4つある。

1.「受給時支払(pay when paid)」条項は契約の相対性を突破し、公平の原則に違反するので、無効である。(2020)新民終45号案件において、一審裁判所は、「契約の相対性原則によると、A社が所有者C社との契約に基づきC社から代金を受給したか否かは、A社からB社への代金支払に影響を与えない。C社から代金を受給後にB社へ支払うというA社の約定は公平性に欠ける。」と判断し、抗弁理由を認めなかった。

2.「受給時支払(pay when paid)」条項は定型約款に該当し、公平の原則に違反するので、無効である。 (2018)京01民終5491号案件において、裁判所は、「協議書では、A社がエンドユーザーから分割払いで受給した後、一定の割合でB社に支払うことを約定した。但し、エンドユーザーがA社に支払うか否か、いつ支払うかは、 B社は知るはずがない。協議書締結時にB社は明らかに不利な地位にあり、公平の原則に違反する。」と判断した。

3.「受給時支払(pay when paid)」条項は、不明確な約定であるため、無効である。(2019)京03民終6724号案件において、二審裁判所は、「まず、『製品仕入販売契約』における「受給時支払」の約定は明瞭でもなく、具体的でもない。支払について、契約ではA社とB社の支払日と金額を約定しているだけで、「受給時支払」の支払について説明しておらず、第三者のC社について記載していない。次に、A社からの証拠は、「受給時支払」条項に係る具体的な説明をB社に告知したことを証明できない。A社の説明により、B社は長期に亘り、支払条件成立の可否が分からないというリスクを負うため、契約法の公平原則と立法精神に違反する。」と判断した。

4.契約の無効により「受給時支払(pay when paid)」条項は無効である。 (2020)川01民終7194号案件において、裁判所は、「仮にA社は、受給時支払条項の原則に従い、契約相手方からの代金を受給した後にBに支払うべきであると主張したとしても、『給水給電設置工事施工労務下請け契約』が無効であるので、A社の主張に根拠がない。」と判断した。。

以上のことから、「受給時支払(pay when paid)」条項が無効と認定されるリスクを下げるために、中間側は「受給時支払」条項を含む契約を締結・履行するときに、下記の4点に注意を払うとよい。

第一に、主体契約の有効性を確保する。主体契約が無効と認定された場合は、「受給時支払」条項は無効になる可能性がある。この場合に、中間側は『民法典』契約編第567条(「契約上の権利義務関係の終了は、契約における決済と清算の効力に影響を与えない」)の規定を根拠に、突破口を切り開くことができる。

第二に、「受給時支払」条項の約定を明確化かつ具体化する。本来、「受給時支払」条項は、少なくとも支払日(具体的な支払時点、支払期限など)、支払金額、支払形式、支払比率、支払条件などに関する約定を含むべきである。例えば、建設工事施工類契約の場合は、総請負業者と委託者の契約で約定される支払時点は、総請負業者と下請け業者の契約で約定される支払時点と一致し、かつ下請け業者には委託者の必要情報を開示するものとする。

第三に、定型約款と認定されることを避ける。「受給時支払」条項を提供する当事者は、特殊な書体、色などで「受給時支払」条項を強調して説明するなど、相手の注意喚起を行い、注意・説明義務を尽くすとともに、できる限り契約条項について双方が検討・協議したメールやり取り、WeChat履歴などを保留し、定型約款と認定されるリスクを下げる。

第四に、契約履行の管理をしっかりと行う。北京市高級人民法院は『建設工事施行契約紛争案件の若干難問に関する解答』第22号において、建設工事施行契約における「受給時支払」条項の効力を肯定した。但し、中間側は決済を遅らせたり、期限が到来した債権の行使を怠ったりしてはならず、かつ決済状況の事実について立証責任を負う。従って、中間側は、プロジェクトの検収を積極的に推進した、プロジェクトの進捗をフォローした、上流の提携者に債権を主張した、関連状況を下流の提携者に知らせた内容など関連証拠を保留すべきである。