建設工事新規定の公布に伴う建築主の留意点
『最高人民法院による建設工事施工契約紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(二)』(以下『建工解釈二』という)の公布は広く注目を集めている。多くの企業は建設工事において建築主の立場にあたる。新たな司法解釈の公布に伴い、建築主として注目すべきポイントは、どのようなものがあるだろうか。
一、入札手続が契約の効力に与える影響の変化。『建工解釈一』第1条の規定によると、入札が必要な建設工事について、入札募集を実施しなった場合、契約は無効となる。『建工解釈二』では、具体的な状況に応じて効力を認定するよう定めている。具体的には、①第2条の規定によると、入札前に双方が実質的な内容について交渉を行った場合は、落札契約を無効と認定することができる。すなわち、「形式的に入札を実施するが、実際には落札者が事前に決定されているケース」や「入札実施前に、入札者と既に内密に合意を形成しているケース」など規定違反にあたる交渉行為が落札契約の無効につながると明確に示されている。これは、建築主に入札段階から規則を遵守させることを目的としている。②第1条の規定によると、提訴時に当該工事が入札募集を必要とするものではなくなった場合、入札募集の未実施のみを理由に契約を無効としてはいけない。言い換えれば、「入札が必要な」プロジェクトが、提訴時に法規や政策の変更により「入札募集を必要としない」プロジェクトとなった場合、「入札募集の未実施」のみを理由に契約無効とすることはできない。これにより既存のプロジェクトのコンプライアンスリスクを低減することができる。
二、建築主が「認識していた」かが、名義借用者(中国語:掛靠人)が建築主を直接訴えられるかの鍵となる。第4条によると、建築主が契約締結時に名義借用の事実を「知らず、かつ知るべきでない」場合、名義借用者は契約の相対性を超えて建築主に工事代金を直接請求することはできない。建築主は名義借用の事実を「明知している、或いは知っているはずである」場合、実際の施工者に対して相当額の補償責任を直接負う必要がある。したがって、建築主は請負者を選定する際には、資格等を厳格に審査する必要がある。また契約締結、施工、決済などの各段階においては、「認識している」と認定されるリスクを軽減するため、請負者の関係者であるかかの確認行い、身元が不確定な者との連絡や取引を避けなければならない。
三、契約の相対性は重視され、実際の施工者による建築主への請求は制限される。『建工解釈一』第43条の規定によると、実際の施工者は直接、発注者を被告として権利を主張することが認められていた。その結果、実務において、建築主が無実にもかかわらず被告となってしまうケースが散見された。『建工解釈二』では、以下のように規定を設けている。①原則として契約の相対性を突破することはできない。第6条によると、孫請け及び違法な下請けの禁止が定められている場合、孫請け及び違法な下請けの受注者が建築主に対して代金の支払いを請求することは認めないとしている。②代位権行使の要求の明確化。実際の施工者が代位権を行使するには、「請負人が期限到来後の債権又は当該債権に係る従たる権利の行使を怠り、その結果、実際の施工者の期限到来債権の実現に影響を及ぼす」という前提条件を満たす必要がある。建築主は、代金支払の期限厳守、代金支払台帳の整備など措置を講じることで、代位権訴訟による請求リスクを効果的に低減することができる。
四、総価契約は原則として価格調整を行わないため、建築主の予算管理が容易になる。『建工事解釈(二)』第9条の規定によると、固定価格契約は原則として人件費や材料価格の変動を理由とする価格変更を認められない。ただし、二つの例外がある。一つは、当事者間で約定がある場合はその約定に従う。もう一つは、『民法典』に規定された「事情変更」に該当する場合には、価格調整を主張できる。特に留意すべき点は、総価契約である建設工事施工契約が工事途中で解除され、当事者が施工済みの部分(合格した部分)の工事代金に合意に至らない場合どのように計算するかについて、第10条では「契約締結時に建設工事所在地の建設行政主管部門から公表された計算基準、計算方法または工事建設分野における関連規範を参照し、施工済み部分の工事代金が全工事代金に占める割合を確定し、当該割合に契約で約定された固定総価を掛けた結果を、請負者の施工済み部分の工事代金として確定することができる」と具体的に定めている。しかし、このルールの合理性及び実行性については、かなり意見が分かれている。
五、建築主が精算を先延ばしにする行為は規制される。実務において、建築主が監査の未完了、または竣工手続の未実施で保証金の起算日を延期などの理由で支払を遅らせるケースは多い。『建工解釈二』第13条の規定によると、監査を理由とする場合に、双方の合意がない限り、裁判所は工事規模、建造費、複雑さに応じて監査結論の提出期限を決定できる。最長でも請負者からの竣工決算書類の提出日から1年を超えてはならない。もし請負者が資料の提出に協力しないなどの事情がある場合は、この1年という期限の拘束は受けない。第14条の規定によると、保証金の返金期限は請負者の現場退去日から起算する。施工契約が請負者の退去後に解除される場合は、保証金の返金期限は施工契約の解除日から起算する。
六、契約解除と品質責任について。『建工解釈二』第15条の規定によると、契約解除後、建築主は請負者に対して工事現場及び施工資料の引き渡しを請求する権利がある。当該規定は、建築主が迅速に後続工事を組織し、損失を軽減するのに役立つ。第16条では品質修復手続を明確にし、建築主が品質修復費用を主張する前に、「請負者に修復を通知する」という前置手続を履行しなければならないことを義務付けている。
総じていえば、『建工解釈二』は建築主の権利範囲をより明確にする一方で、建築主に対し、プロジェクトの規範管理において「前期のコンプライアンス審査、施工過程における契約履行への監督、資金リスクコントロールのライフサイクルマネジメントを重視する」よう、厳重に求めている。