対日輸出規制の動向と企業の対応策

対日輸出規制の本題に入る前に、中国では国家安全保障の観点から、2024年以降、レアアースおよび両用品目の輸出規制に関する法整備が急速に進展し、全体的に強化が継続しているという背景があることに留意する必要がある。主な規定は以下の通りである。

日付 規定の名称
2024/06/22 レアアース管理条例
2024/09/30 両用品目輸出管理条例
2024/11/15 両用品目輸出規制リスト
2025/04/04 商務部 税関総署公告2025年第18号 一部の中重希土類関連品目に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/06/16 税関総署公告2025年第123号 両用品目輸出規制に関する税関疑義事項についての公告
2025/10/09 商務部 税関総署公告2025年第55号 超硬材料関連品目に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/10/09 商務部 税関総署公告2025年第56号 一部のレアアース設備および原料・補助材料関連品目に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/10/09 商務部 税関総署公告2025年第57号 一部の中重希土類関連品目に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/10/09 商務部 税関総署公告2025年第58号 リチウム電池および人造黒鉛負極材料関連品目に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/10/09 商務部公告2025年第61号 海外関連レアアース品目に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/10/09 商務部公告2025年第62号 レアアース関連技術に対する輸出規制の実施決定の公布
2025/11/07 商務部・税関総署公告2025年第70号 商務部・税関総署公告2025年第55号、56号、57号、58号および商務部公告2025年第61号、62号の実施を一時停止する決定の公布

(注:実施の一時停止期間:即日より20261110日まで。

毎年の年末に更新 中国両用品目・技術輸出入許可証管理目録

特定の国/地域向け輸出規制としては、従来は、主に米国が対象であった。商務部は2024年12月3日に2024年第46号『関連両用品目の対米輸出規制の強化に関する公告』を公布した。その後、2025年には計5回にわたり公告を発表し、複数の米国エンティティを両用品目輸出規制管理リストに追加した。さらに2025年7月9日、商務部は台湾地区の8つのエンティティを両用品目輸出規制管理リストに追加することを公告した。

その後、2025年11月の日本首相の発言を契機に日中関係は緊張状態に突入した。これを受け、2026年1月6日、商務部は2026年第1号『対日両用品目輸出規制の強化に関する公告』を公布した。同公告は「すべての両用品目を日本の軍事ユーザー、軍事用途、および日本の軍事実力の向上に資するあらゆるエンドユーザー用途へ輸出することを禁止する。」と規定している。この公告は極めて包括的である。前記の対米公告(2024年第46号公告)と類似点がある一方、相違点も認められる。両公告はいずれも両用品目を対象国の軍事ユーザーに輸出し、または軍事用途のために輸出することを明確に禁止しているという点では共通している。一方、2024年第46号公告第2条には、「ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、超硬材料関連の両用品目を米国に輸出することは原則として許可しない。グラファイト両用物品目の米国向け輸出については、より厳格なエンドユーザーと最終用途の審査を実施する。」と規定している。これは明らかに実務的な規定である。しかし商務部2026年第1号公告には、特定の両用品目を対象とした輸出禁止規制や厳格な制限規定は設けられていない。ただし、商務部2026年第1号公告では、「すべての両用物品を日本の軍事ユーザー、軍事用途に輸出することを禁止する」ほかに、「日本の軍事実力の向上に資するあらゆるエンドユーザー用途に輸出することを禁止する」という表現を追記していることは、関連注目リストが公布される可能性を示唆するものであると解される。

総じて、商務部2026年第1号公告の適用範囲は広いものの、具体性に欠ける。「宣言」や「警告」の意味合いが強く、実務に直結する規則であるとはいえなかった。

しかしながら、その後の情勢はさらに緊迫化した。2026年の春節連休明け初日の2月24日に、商務部は2つの公告を発表した。

公告第11号では、軍事・防衛産業に係る日本の20社のエンティティを輸出規制管理リストに追加した。また、規制管理コントロールリストに追加された企業向け両用品目の輸出を明確に禁止し、かつ即時停止を命じた。規制管理リストの運用は対米規制においてもみられる一般的措置に属する。

公告第12号では、両用品目のエンドユーザーと最終用途の確認が困難であるとの理由により、別の20社の日本エンティティを「注目リスト」に追加した。本公告は、注目リストに追加された企業に対する両用品目の輸出を禁止していないが、一般ライセンスの申請や情報の記入登記による輸出証明書の取得を明示的に禁止している。また、個別ライセンスを申請する際には、注目リストに追加された企業に関するリスク評価報告書、および書面による承諾書の提出を義務付けている。さらに、公告では、当該企業が検証協力義務を履行した場合は、申請を行い、商務部による審査を経た上で、注目リストから除外される可能性があることを定めた。注目リストの法的根拠は『両用品目輸出規制条例』第26条にあるが、実際の適用は今回が初めてである。対象業種をみると、管理コントロールリストとは異なり、注目リストに追加されたエンティティは自動車、電子部品、原材料関連企業が中心である。これらのエンティティの背景を調査したところ、中国商務部は、民生用を装いながら最終的に軍用用途へ転用される可能性を考慮し、エンドユーザーと最終用途への審査を強化することで、軍用転用を防止しようとする意図があると考えられる。言い換えれば、両用品目の管理において、単に両用品目に該当するか否かという「物」ベースの管理から、サプライチェーンにより審査を行い、最終「用途」および「ユーザー」ベースの管理への移行が進みつつある。

このような状況下において、日系企業または対日輸出企業がどのように対応するが適切なのかが喫緊の課題となっている。対応の方向性としては、以下の点が重要となる。

第一に、自社の輸出製品が両用品目に関わるか否かを確認すること。

次に、両用品目に関わる場合は、サプライチェーンを整理・明確化する必要がある。サプライチェーンにあるエンティティが輸出規制管理リストや注目リストに追加されている、あるいは輸出規制管理リストや注目リストに掲載されているエンティティのサプライヤーであるかを確認し、リスクの有無および程度を評価する。

第三に、輸出規制対応に関するコンプライアンス管理体制を確立する。具体的には以下の内容を含む。

1、会社において組織運営、管理体制、取引などの各側面における透明性・独立性の確保

2、顧客スクリーニング、品目・技術スクリーニング、契約条項の最適化、サプライチェーン管理などにおける実務的な規則を確立する。企業のコンプライアンス管理のイメージを具現化するとともに、日常管理を通じて効果的にリスクを予防する。

3、リスク発生の事前警告および対応メカニズムを確立する。ミドルリスクまたはハイリスクの事案発生時や発生の兆候を察知した場合、迅速に効果的な措置を講じ、関連する証拠資料を提出する。