労働争議の時効はご存知ですか

労働争議が発生した場合、法により、原則としてまず労働仲裁を申請しなければならない。仲裁裁定に不服がある場合は、裁判所に提訴することができる。労働争議事件の時効は民事訴訟における時効とは異なる。『労働争議調停仲裁法』第27条第1項によれば、労働争議について仲裁を申請する時効期間は1年とされており、当事者が自己の権利が侵害された事実を知った日、または知るべきであった日から起算される。しかし、司法実務においては、この1年の仲裁時効の起算点をいつにするか、特定の状況に当該1年の時効を適用できるかについては意見が一致していない。そのため、労働者・使用者いずれにとって慎重な対応が求められる。以下では、よく見られる労働争議の時効について整理する。

  1. 労働関係確認請求争議の時効

全国的に統一された規定はない。労働仲裁部門においては、1年という時効期間を厳格に適用している。裁判所の多くも「1年の時効期間を適用する」と判断しているが、一部の裁判所は「労働関係の確認請求は確認の訴えに該当し、実体的な権利義務に関わらないため、訴訟時効制度を適用するべきではない」と判断している(例:(2023)京民申2341号、(2023)滬02民終5718号、(2023)蘇0113民初340号)。

仮に裁判所が確認の訴えとして、労働関係を確認した旨の判決を下したとしても、契約未締結による二倍賃金、経済的賠償金、法定年次有給休暇など実体的権利については、依然としてそれぞれの関連する時効に基づいて審理・判断が行われるため、無期限に遡及して請求できるわけではない点に留意が必要である。

    2.労働契約未締結による二倍賃金差額紛争の時効

『労働契約法実施条例』第7条には、「使用者が雇用開始日から起算して満1年を経過してもなお労働者と書面で労働契約を締結していない場合は、雇用開始日から起算して満1か月後の翌日から満1年に達する前日までの期間について、労働契約法第82条の規定に基づき、労働者に対して毎月二倍の賃金を支払わなければならない。……」と規定している。

上海市『労働争議の若干問題に関する解答』第1条第2項には、「労働契約未締結による二倍賃金の差額に対して1年の仲裁時効を適用し、書面による労働契約が締結されなかった時点から起算し、月単位で仲裁時効を計算する。」と規定している。一方、『労働争議事件の審理に関する北京市高級人民法院、北京市労働人事争議仲裁委員会の解答(一)』第41条には、「労働契約未締結による二倍賃金の差額について、1年の仲裁時効を適用し、労働者が権利主張を行った日から過去1年分について日割り計算する。」と規定している。上述の2つの規定は司法実務における典型的な計算方法であり、上海では順算法、北京では逆算法を採用している。上海も北京いずれも1年の仲裁時効を適用しているため、最終的な結果は類似しているが、上海では月単位、北京では日単位で計算する点が異なる。

  1. 労働報酬及び残業代争議の時効

『労働紛争調停仲裁法』第27条第4項には、「労働関係が存続している期間中に労働報酬の未払いにより紛争が生じた場合、1年の仲裁時効を適用しない。ただし、労働関係が終了した場合は、労働者は労働関係終了日から1年以内に申し立てを行わなければならない。」と規定している。『賃金総額の構成に関する規定』第4条には、「残業代は賃金の構成部分に属するため、残業代についても労働報酬未払いに関する仲裁時効に従って執行する。」と規定している。

ただし、使用者が労働報酬の未払いに関して、従業員に借用書を発行した場合、『労働争議事件の審理における法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(一)』第15条の規定によると、その性質上、労働争議から債務紛争に転化するため、1年の時効は適用されなくなる。そのため、従業員が借用書に記載された未払金を請求する場合は、3年の訴訟時効が適用される。

    4.法定の年次有給休暇賃金争議の時効

法定の年次有給休暇賃金争議の時効については、実務上で意見の対立が大きい。2023年12月12日、『労働争議事件の審理における法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(二)(意見募集稿)』は社会に対して意見募集を行った。その中の第5条では、「未消化の年次有給休暇賃金報酬の仲裁時効は労働報酬の仲裁時効を適用する。」と規定してただしたが、2025年に司法解釈が正式に公布されたときには、当該条項は削除された。首都経済貿易大学労働経済学院の範囲教授が法定の年次有給休暇の賃金の性質を主として分析した『年次有給休暇賃金報酬の仲裁時効の区別適用』は2025年第5期の『求索』雑誌に掲載されている。。実務においては下記2つの見解が見られる。(1)福利厚生に該当するため、1年の仲裁時効を適用すべきである。(2)労働報酬に該当するため、労働契約存続期間中は時効の制限を受けない。

深圳市および山東省が公布した現行の地方規定は、上述後者の意見を表明している。『労働争議事件の審理に関する深圳市中級人民法院の裁判指針』には、「未消化の年次有給休暇賃金における労働仲裁を申請する時効期間は、3年度目の1月1日当日から起算する。ただし、労働契約が解除または終了された場合は、労働契約解除日または終了日から起算する。」と規定している。『労働争議事件の審理における若干問題に関する山東省高級人民法院審判監督第三法廷の解答』第20条には、「法定の年次有給休暇は労働報酬の仲裁時効に従って執行する。」と規定している。つまり、労働契約が存続する期間中であれば、入社当年の未消化の法定年次有給休暇賃金も遡及して請求することができる。

  1. 高温手当争議の時効

上海、山東、深圳などの地域の裁判所は「通常、高温手当とは、高温環境下で経済建設および企業の生産経営活動に従事する労働者に対し支給する特殊な賃金補償を指し、その性質は非労働報酬性収入に属する。高温手当の請求には通常の仲裁時効が適用される。つまり当事者が自己の権利が侵害されたことを知った日、または知るべきであった日から起算すべきである」と判断している(例:(2023)滬0109民初884号、(2021)粤0306民初34322号)。

北京では、高温手当は労働報酬に該当し、特殊な仲裁時効を適用する傾向がある。労働者が離職後1年以内であれば仲裁を申請することが可能である(例:(2025)京02民終2768号)。