外国籍労働者と中国現地法人との間の労働関係の成立はいつになる?

    W社はカナダ人のDさんを総経理に任命し、双方で労働契約を締結した。W社が一方的にDさんを解雇したため、DさんはW社に対して訴訟を起こし、労働契約違法解除による経済補償金の支払いを請求した。本件について第一審と第二審を経て、最終的に広東省高級人民法院は再審により、「双方間の労働契約は無効で、Dさんの経済補償金支払請求を認めない」という判決を下した(詳細は(2008)粤高法審監民提字第63号判決書参照)。

    『労働契約法』第7条によると、使用者は労働者雇用の日から労働者と労働関係を構築する。本件において、W社はDさんを雇用していたので、双方間の労働関係は雇用日から成立したと認定されるべきであるが、なぜ裁判所はDさんとW社との労働契約を無効と認定したか?

    その理由は、外国人が中国で就労する場合は、『労働契約法』以外に、『外国人の中国における就業管理規定』及び『出入国管理法』の規定にも合致しなければならないからである。『外国人の中国における就業管理規定』第5条には、「使用者は外国人を雇用する場合、当該外国人のために就業許可を申請しなければならない。許可を受け、かつ「中華人民共和国外国人就業許可書」を取得した後に、当該外国人を雇用することができる。」と規定している。『出入国管理法』第41条では、「外国人は中国で働く場合、規定通りに「外国人工作許可証」及び就労目的での居留証を取得しなければならない。……」と規定している。従って、上記の関連就業証明書類を取得する前に、外国人が中国国内で使用者と労働契約を締結したとしても、所轄部門は当該外国人の関連就業証明書類の発行を認可しない可能性があるため、かかる労働契約は効力を生じない。

    『労働紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(四)』第14では、「外国人が中国の使用者と労働契約を締結しており、関連就業証明書類を取得していない場合は、裁判所は、当該外国人と使用者との労働関係の成立を認めない。」と明確にしている。文頭事件において、広東省高級人民法院の判決は上記の主旨を示している。

    以上のことから、外国人が関連就業証明書類の取得を申請している期間、労働契約の効力がまだ発生していないうちに働き始めることは、不法就労に該当し、当該外国人も中国の使用者も行政処分を受けるリスクがある。従って、外国人を雇用する中国の使用者は、双方間の労働契約の効力を生じる前に、当該外国人に働かせないように心がけるべきである。