企業が従業員のタトゥーに干渉する権利はあるのか

東莞のある会社の社長は、採用候補者がタトゥーを入れていることを知り、直ちに採用拒否を決定した。その理由としては、タトゥーを入れている者はチンピラ、又は反抗的な人物という第一印象を与えるため、会社全体の雰囲気に悪影響を与える可能性があると考えたからだ。この出来事は激しい議論を引き起こすこととなった。会社は自社の判断基準で採用の要否を決定する権利があるという意見の一方で、タトゥー、髪型、服装などはパーソナルイメージマネジメントの範疇に属するため、会社は干渉する権利がないという意見も見られる。根本的な問題は、会社が従業員をどこまで管理するのが適切なのかということである。

タトゥーは古代の宗教儀式に由来するものである。古代の中国では、タトゥーは少数民族のトーテム信仰によく見られた。漢民族の間ではタトゥーは刑罰として広く使われていた。岳飛のように野心を示すためにタトゥーを入れるケースはごくまれであった。中国の改革開放後は、タトゥーは個性を表現するものとなった。

全体的に、中国社会ではタトゥーは否定的に捉えられている。しかし、現行のタトゥーに関する禁止規定は特定の対象者や特定の業界が対象となっている。例えば、『未成年者タトゥー管理工作弁法』では、いかなる企業、組織、個人も未成年者にタトゥーサービスを提供してはならず、未成年者にタトゥーを入れることを強要、誘惑、教唆してはならないと規定している。『公務員採用健康診断特別基準』では、公安、刑務所などの職位においては、タトゥーはあってはならず、他の職位についても衣服でタトゥーを覆うことができなければ不適格となると規定している。『鉄道旅客輸送サービス品質規範』では、「列車乗務員の身体の露出部位にはタトゥーがない」ことが規定されている。航空会社、銀行、ホテルなどのサービス業界についても同様の要件がみられることが多い。病院や食品加工工場などの業界は、安全性や衛生上の理由からタトゥーを制限又は禁止されている。数少ないタトゥーによる解雇事件(例えば(2013)昆民初字第1069号事件)において、これらのことが使用者によるタトゥーを入れた従業員の解雇が司法機関に認められた根本的な理由となっている。

上記以外の企業は、タトゥーを重大な規則違反とする解雇事由は、雇用差別として疑われる可能性があるため、リスクが高い。タトゥーに対する許容度が低く、それを拘束したい場合は、以下のような措置を検討すると良い。

(1)労働規律の規定において、文明的なビジネスマナーを提唱し、服装と身なりを適切に整えることを要求するとともに、タトゥー及び奇抜な髪色や髪型などを禁止事項に含める。

(2)商社など対外交流が多い場合は、関連従業員による類似行為の抑制のために、規則制度に罰則規定において、タトゥーの露出などの行為を処分対象(例えば警告)にする。

(3)個別の事件が発生した場合、規定に基づき、職位の特徴、タトゥーの露出程度、クレームの有無などを総合的に考慮した上で、処分するか否か、どのような処分を行うかを決定する。必要に応じて、配置転換などが考えられる。