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    「三性」規定に違反した労務派遣は、無効なのか?

        李さんは上海A社と労務派遣契約を締結した後、現場作業者としてB社に派遣された。その1年後、李さんとB社との間に紛争が起きた。李さんは、「現場作業者は補助的な職務に該当しないため、労務派遣契約は無効である。従って、自分はB社との間に実質的な労働関係が存在する」と主張し、B社に労働契約未締結とし、月度賃金の2倍相当の損害賠償金を支払うよう要求した。最終的に上海市第二中級人民法院は、「現場作業者の職務は「三性」(臨時性、補助性、代替性)の規定に合致しない。但し、「三性」に関する規定は任意規定に該当するため、労務派遣契約は有効である。」と判断した。一方で、上記の事例と酷似している、南京C社の運転手韓さんとC社との間の労働紛争事件では、南京市中級人民法院は、「運転手の職務は「三性」の規定に合致せず、労務派遣契約は法律の強行規定に違反するため、無効である。」と判断した。 

        同類事件に対して裁判所の判断が異なるのはなぜだろうか?
    『労働契約法』第16条では、派遣は臨時的、補助的、代替的な職務のみに対して適用し、又、『契約法』第52条の規定によると、法律、行政法規における強行規定に違反する場合、契約は無効とすると規定されている。実務において、『労働契約法』第16条が強行規定に該当するか否かについては、司法機関の観点が一致せず、食い違いが大きい。

        1つの観点は、『労働契約法』第16条は強行規定に該当するというものである。派遣先における職務が「三性」に合致しない場合は、労務派遣契約は無効となり、「労働者と派遣先の間に実質的な労働関係が存在する」と認定される。例えば、(2016)蘇01民終4718号、(2016)蘇民申2041号等において江蘇省裁判所は当該観点を示している。

        他の観点は、『労働契約法』第16条は任意規定に該当するというものである。派遣先における職務が「三性」に合致しなくとも、労務派遣契約は依然として有効となる。但し、派遣会社と派遣先は法に従い行政処分を受ける。上海市高級人民法院による『労務派遣法律適用の若干問題に関する会議紀要』では当該観点を採っており、「三性」や派遣労働者の割合などに関連する規定は、派遣会社又は派遣先を義務主体とする任意規定に該当する。これらの任意規定に違反した場合も、労務派遣契約及び労働契約の効力に影響を及ぼさない。派遣会社又は派遣先が任意規定に違反した場合は、人力資源?社会保障行政部門は期限を切り、是正するよう命じる。」と指摘している。調査結果から見れば、北京市、河北省等の地区の裁判所もこちらの観点を持っている。

        筆者の個人的な観点としては、2つ目の観点の方がより合理的であると思われる。但し、上述したように、各地の司法機関の観点が一致しておらず、立法機関及び最高人民法院も意見を明確にしていないため、個別事件の裁判結果に不確定である。従って、不必要なリスクを回避するために、企業は「三性」に合致しない職務に対して派遣を行わず、又、司法機関の観点、傾向に注意を払う必要を擁すると思われる。