特許実施許諾契約の許諾者破産に伴うリスクの防止

    激烈な市場競争の中、企業破産は珍しくない。しかし、特許実施許諾契約の締結時に、当事者が相手方の破産に伴う法的リスクをあまり考慮していないことが多いようだ。事実、現実的な問題として、許諾者が破産した場合は、被許諾者は引き続き特許を実施することができるのだろうか?またその実施に伴い、どのようなリスクが発生しうるのだろうか。

    その回答は、はっきり決まっていない。

    『契約法』では、特許実施許諾契約について特別な規定はないが、『破産法』第18条によると、破産管理者は双方当事者の未履行契約を解除するか、もしくは履行を継続するかを決定する権利を有する。即ち、破産管理者は双方当事者の未履行契約について完全な選択権と決定権を有するが、被許諾者は選択権と決定権を与えられていない。従って、破産管理者が契約の解除を選択した場合は、被許諾者は特許の実施が継続できなくなることは明らかで、既に投入した資金も水の泡に帰するだけでなく、第三者に対し違約責任を負う可能性もある。又、関連司法部門の実務規則によると、被許諾者は、一般的に実際の損害を限度額として契約解除による損害のみをもって債権を届け出ることができる。しかし、このような債権は普通債権であるため、被許諾者は清算後に少ししか回収できない、又、一銭も回収できない恐れがある。破産管理者が継続履行を選択した場合は、法律規定によると、許諾者が担保を提供すれば、被許諾者は契約の履行を継続しなければならない。この場合に被許諾者は特許の実施が継続できるが、技術支援、業務研修、特許権侵害の応対などの義務について、許諾者が的確に履行することができない、もしくは条件を付加することも多い。

    従って、法律規定が不十分である状況下で、被許諾者はいかにして許諾者の破産に伴うリスクを事前に防止するのかが重要な課題となっている。

    契約法と破産法から分析すれば、被許諾者は下記の点を参考に、許諾者の破産に伴うリスクをできる限り下げることができるだろう。

    まず、特許実施許諾契約の締結前に、許諾者の資力、信用などを詳しく調査し、信用性が無い場合や経営が不安定な企業と長期特許実施許諾契約を締結しないように注意すべきである。

    次に、特許実施許諾契約の締結時に、関連事項を明確に約定しておく。下記の点を含むが、それらに限らない:(1)特許実施許諾料と技術訓練費などの費用をそれぞれ約定し、且つ許諾者が履行しない場合、被許諾者が講じられる手段も約定しておく。許諾者が破産となり、且つ破産管理者が契約の継続履行を選択した場合に、被許諾者が技術支援を得られないこと、もしくは条件が付加されることを避ける。(2)許諾者が破産した場合の費用支払や技術改善の処理などを含めて、契約の継続履行の後続事項を約定する。(3)許諾者が破産した場合の履行要否を表示する期間制限を約定する。突如、不測の事態が発生した場合に、直ちに救済措置がとれるようにしておく。(4)許諾者の破産時は、被許諾者の優先購入権について合法で有效な約定を行う。

    最後に、特許実施許諾契約の履行過程において、許諾者の経営状況に留意し、破産の兆しがみられた時は、できる限り早急に妥当な応対を行う。例えば、必要に応じて契約の変更について協議し、又は代替可能な特許技術を直ちに探すなど。