覚書には法的効力はあるか
ビジネス活動では、当事者が正式な合意に至る前に、議事録や覚書によってこれまでの協議内容や意見を記録することは珍しくない。覚書が締約済だと見做されることを避けるために、覚書に「双方に対する拘束力を有するものではない」という条項を追加する当事者もいるが、ほとんどの場合、このような約定を行う当事者は少ない。このような場合、覚書の法的効力は認められるのだろうか?
司法実務規則の観点から見て、通常、以下の特徴を備える覚書は法的拘束力を有すると認定される。
まず、契約の実質的な条項が含まれる場合である。一部の当事者は、「文書の名称が覚書であり、契約や合意に属さないため、拘束力を有しない」と考えがちであるが、実際はそうではない。『民法典』の規定によれば、契約が成立するか否かは、名称ではなく、内容により判断される。『<中華人民共和国民法典>契約編通則の適用における若干問題に関する最高人民法院の解釈』第3条第1項には、「契約成立の有無について当事者の意見が対立し、人民法院が当事者の氏名または名称、目的物及び数量を確定できる場合は、通常、契約は成立していると認定される。」と規定している。また第6条第2項には、「当事者が意向書や覚書を締結することにより、取引の意向を表明するだけで、将来の一定期間内に契約を締結することを約定しておらず、又は約定していても、将来締結する契約の主体や目的物等を特定するのが困難である場合、一方が予約契約の成立を主張しても、人民法院はこれを認めない。」と規定している。したがって、覚書に契約の実質的な条項が含まれている場合には、法的拘束力を有することになる。例えば、(2025)吉08民終857号事件において、覚書では持分譲受側がA社またはB社であることを約定しているため、裁判所は「将来契約を締結する主体が約定されていないため、この覚書は予約契約に該当せず、法的効力を有しない。」と判断した。
次に、覚書に契約の実質的な条項が明示されていない場合であっても、実際の履行状況から、当事者間で契約の実質的な条項について合意に達していたと推認できる場合は、通常、当該覚書に法的効力を有すると認定されることがある。この判断根拠は主に『民法典』第490条の「署名、押印または拇印の前に、当事者の一方が主要な義務を履行し、相手方がこれを受け入れた場合、当該契約は成立する」という規定である。例えば、(2023)京01民終2853号、(2018)魯14民終3391号と(2017)滬0116民初4529事件においていずれも「一方当事者が覚書で約定された義務を実際に履行したことから、覚書は双方に対する拘束力を有する」と認定された。
また、司法機関は覚書の法的効力の有無を判断する際、通常、以下の要素も総合的に考慮する。
(1)署名主体の合法性・有効性。公印や契約専用印の押印がされているか、授権代表の署名があるかなど。例えば、(2021)京民再158号事件において、関係者個人の署名しかないが、双方間で表見代理の成立を証明する証拠が存在するため、覚書は法的効力を有すると認定された。一方、(2020)鄂01民終8420号事件においては、裁判所は「一方の署名しかないため、覚書は法的効力がない」と判断した。
(2)覚書の内容が法律、行政法規において「違反した場合、契約が無効になる」旨の強行規定に違反してはならない。例えば、(2025)滬74民終30号事件において、裁判所は、「覚書は債券市場における公平、公正および責任の取引秩序に違反するため、無効である。」と判断した。
(3)覚書が従たる契約である場合は、主たる契約が法的効力を有することを前提とする。例えば、(2025)京03民終12011号事件において、裁判所は、「覚書における紛争解決方法に関する条項が「増資協議書」およびその補足協議書における仲裁条項を変更する内容であったが、当該変更は合法かつ有効な前置手続を欠いていたため、拘束力を有しない。」と判断した。(2018)陝民終454号事件においても、裁判所は、「覚書は施工契約の補足契約であるが、主たる施工契約が無効であるため、覚書も無効である。」と判断した。