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    中国で設立された外資企業間の契約において、国外の仲裁機関による仲裁を約定することはできるか?

    江蘇省の米系企業A社と上海の日系企業B社は売買契約を締結し、「紛争が発生した場合、いずれか一方は香港のある仲裁機関に仲裁裁決を申し立てることができる。」ことを約定している。このような約定は有効であるか?

    民法の基本原則の一つは意思自治であるので、上述のような約定は有効だという意見がある。しかし、実際はこの認識は間違いである。これについて、最高裁判所は『渉外商事海事審判実務問題解答』第83条において、「法律において、国内当事者が渉外要素のない紛争について国外仲裁を申し立てることを許可していない。そのため、国内当事者は、渉外要素のない契約または財産権益紛争について、国外仲裁機構に仲裁を申し立てるか、または国外で臨時仲裁を行うことを約定した場合、人民法院は仲裁に関する合意を無効と認定する。」と指摘し、明確な態度を見せている。最高裁判所は『大韓商事仲裁院の第12113-0011号、第12112-0012号仲裁裁決に対する北京朝来新生体育休閑有限会社の認可申請案件の指示に関する返信』において、同じ意見を表明している。従って、関連紛争が渉外民事関係に属さない場合は、国外仲裁機構による管轄を受けるという約定は無効となる。

    渉外民事関係の判断については、主に『<中華人民共和国渉外民事関係法律適用法>の適用における若幹問題に関する最高人民法院の解釈(一)』第1条を根拠とする。同規定によると、「民事関係が次のいずれかの状況に該当する場合は、人民法院はそれを渉外民事関係と認定する。(1)当事者の一方または双方が外国公民、外国法人またはその他の組織、無国籍者である場合。(2)当事者の一方または双方の経常居住地が中華人民共和国の領域外にある場合。(3)目的物が中華人民共和国の領域外にある場合。(4)民事関係の構築、変更、消滅をもたらす法律事実が中華人民共和国の領域外にある場合。(5)渉外民事関係と認定できるその他の状況。」

    上述の(1)、(2)、(4)に対する判断は比較的明確である。例えば、本件の2社は明らかに(1)、(2)の状況に合致しない。しかし、(3)の目的物に対する判断及び(5)のその他の状況の適用はケースバイケースで紛争が発生しやすい。

    まず、目的物については、中国領域外にあることをどのように確認するのか?「メックス船舶事件」において、当事者はいずれも中国現地法人であり、上海海事裁判所は以下の要素を通じて、渉外仲裁の約定を有効と認定した。①事件に関わる船舶はABS(American Bureau of Shipping)に入る予定の国際航行船舶である。②マーシャル諸島を船舶の国籍国と約定した。③買主が国外で完全子会社を設立して契約上の権利を承継することを約定した。④全体的に見て、目的物は中国国内に入ったことがないか、又は所有権証明書に記載された国は中国ではない。(2015)四中民(商)特字第00152号寧波新匯事件において、当事者はいずれも中国現地法人であり、北京第四級裁判所は「事件に係わる契約ではいずれも上海保税区現物交付を約定している。税関管理制度によると、保税区内の未通関貨物は未入国貨物に該当するため、本件は渉外要素がある」と判断している。但し、同様の事件が他の裁判所によって異なった結論が下されている。

    次に、司法実務において通常「非典型的な渉外要素」と呼ばれる「その他の規定」については、判例が少なく、主に自由貿易区に設立された主体に係わる。例えば、(2013)滬一中民認(外仲)第2号シーメンス事件において、上海市第一中級人民法院は「申請者と被申請者はいずれも中国法人であり、契約で約定された納品地、目的物所在地はいずれも中国国内にあり、当該契約は表面上渉外要素がないと考えられる。しかし、申請者と被申請者はいずれも上海自由貿易試験区内に登録された外資系独資企業であり、その資金源、最終利益の帰属、会社の経営決定はいずれも外国投資家と緊密に関係している。自由貿易試験区を通じて投資貿易の利便性を推進するという改革の背景下において、これらの渉外要素はより重視されるべきである。また、契約履行の特徴から見て、目的物はまず国外から自由貿易試験区へ運ばれて保税監督管理を受け、その後契約履行の必要に応じて適時通関手続を行われ、区内から区外へ流通する。これも一定の国際貨物売買の特徴を持っている」と指摘した。当該事件に対する最高裁判所の返信(2015民四他字第5号)において、「本件の申請者と被申請者はいずれも中国法人であり、双方が締結した『貨物供給契約』に典型的な渉外要素がないが、本件は自由貿易区に関わる案件であり、双方の当事者はいずれも外資系独資子会社である……『人民法院が「一帯一路」建設のために司法保障を提供することに関する最高人民法院の若幹意見』を貫徹するため…自由貿易区の法治建設を支援するための先行先試(全国に先駆けて新たな政策を試行する)精神に基づいて……」と指摘し、最終的に「渉外民事関係の他の状況」と認定した。実際には、『自由貿易試験区の建設に司法保障を提供することに関する最高人民法院の意見』(法発2016年34号)には、「9.仲裁合意の効力を正しく認定し、仲裁事件の司法審査を規範化する。自由貿易試験区内に登録された外商独資企業が互いに商事紛争について域外仲裁を約定した場合は、その紛争には渉外要素がないという理由だけで、関連仲裁合意を無効と認定すべきではない」と指摘した。しかし、それにもかかわらず、司法実務において、同一事件に対して異なる判決が下されるケースもある。

    以上のことから、契約が『<中華人民共和国渉外民事関係法律適用法>の適用における若幹問題に関する最高人民法院の解釈(一)』に規定された(1)、(2)、(4)の要求に合致せず、かつ目的物が(3)の要求に合致するかどうかが不確実である場合、契約当事者は「国外仲裁機構による管轄を受ける」ことを約定しないほうが良いと思われる。