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    従業員にカルテの提出を求められるか?

    受付をするだけで診察を受けない、虚偽の病欠証明書を購入、長引く腰痛……様々な虚偽の病欠は、人事部門最大の頭痛の種になっている。そのため、多くの企業では、規則制度において、病気休暇を申請する際に従業員が人事部門に提出すべき証明書類(例えば、診療申込書、病欠証明書、カルテ、医薬品リスト、検査報告書、入院報告書など)を明記している。

    しかし、『個人情報保護法』(2021年11月1日より)施行後、多くの従業員は「プライバシー」や「個人のセンシティブ情報」を理由に、カルテや検査報告書などの病欠書類の提出を拒否するようになった。一方、使用者は、人事管理の観点から、会社には病欠審査権があり、個人情報であっても確認しなければならないと認識している。この問題の本質は、使用者の病欠審査権と個人情報保護が抵触するときに、どちらを認めるかということである。この問題に対し、実務では2つの観点があり、食い違いも大きい。

    それでは、司法機関はどのような立場を持っているのだろうか。これは恐らく使用者及び従業員が高い関心を持つところだろう。まずは2つの典型的な事例を見てみよう。

    (2021)京03民終106号事件において、従業員Xはうつ病の診断証明書と病欠証明書を提出したが、会社の要求するすべての受診書類を提出しなかった。北京第三中級人民法院は「会社が求めるカルテ、心理証明資料、費用伝票など証明書類は必要なもののみに限るべきである。Xが提供した診断証明書と病欠証明書は、病気休暇が必要であることを証明するのに十分であり、Xが医療期間の延長を要求した場合にのみ、会社は他の診療書類の別途提供を要求する必要がある。」と指摘した。

    (2022)滬01民終11917号事件において、従業員Gは2019年1月10日から労災で入院した。会社は2019年7月から労働能力検定を5回通知したが、Gは協力を拒否した。2020年4月30日、Gはリハビリ病院に2月27日から4月29日までの6通の病欠証明書を一括して発行してもらった。その内、個別に補充した病欠証明書の発行日が、Gが会社に他市へ服喪に訪れると通知した日であった。会社は何度もGに対し、規則制度に従い入院報告書などの証明書類を提出するよう要求が、Gはプライバシーに係わるとして提出を拒否した。これについて、上海第一中級人民法院は、以下の通り指摘した。「会社はGから提供された受診記録によって入院期間を判断できないため、入院報告書の提出を要求した。これは合理的である。Gが提供した病欠証明書の発行日にGは上海にいなかったため、会社は合理的な疑念を抱き、証明書類の提出を求めるのも合理的である。」

    以上の事例から、判断の基本ルールをまとめることができる。会社が従業員の病欠を審査する際、病気休暇に係る確認書類の「幅」と「深さ」は「必要」最低限とする。つまり、会社は診断証明書と病欠証明書の審査から、従業員が確かに病気休暇を必要としていることを確定できる場合、これ以上にカルテなどの他の書類の提出を要求するべきではない。逆に、従業員から提供された書類だけでは会社として判断できず、又は矛盾点などを発見した場合、病気休暇が本当に必要かどうかを合理的に判断できるまで、病欠を証明するほかの書類の提出を別途要求することができる。

    では、冒頭で述べたように、従来の「就業規則」や病気休暇に関する規定で、様々な病欠書類を詳しく定めている場合、係る内容の修正をする必要があるのか。私見としては、状況によって審査対象となる病欠書類が異なるため、規定自体を修正する必要はないと思われる。しかし、人事部門は具体的な病欠、従業員から提供される病気休暇証明書類に対して、柔軟かつ合理的に判断しなければならない。従業員から提供される書類が少なく、判断できない場合は、すぐさま、一度でたくさんの書類の提出を要求するのではなく、自制的、保守的な態度で、判断できるまで少しずつ書類の提出を要求したほうがよい。