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    相手が違約した場合は、こちらも投げやりになってよいか?

    最近、顧客先のA社から、「取引相手が違約したので、こちらは供給を停止するなど、自棄糞になってもいいでしょうか」という相談を受けた。不景気で多くの企業が経営不振に陥っているため、違約したり、違約されたりするケースは珍しくない。A社が抱える問題に、多くの企業が関心を持っていると思われる。

    法律の視点からみると、これは先履行の抗弁権に係わる。『民法典』第526条では、以下のことを定めている。「当事者は互いに債務を負い、履行には順序がある。債務を先に履行する当事者がそれを履行しない場合、後に履行する当事者はその履行請求を拒否する権利がある。債務を先に履行する当事者の債務履行が約定に合致しない場合、後に履行する当事者はその相応の履行請求を拒否する権利がある。」 従って、契約により、相手に先履行の義務がある場合は、当事者は相手の違約状況に応じて、自分がどの義務を履行しなくてもよいかを判断することとなる。例えば、(2023)京02民終6759号事件において、北京市第二中級裁判所は、「胡氏と陳氏は会社に対して先履行の抗弁権を有する。会社が約定通りに持分譲渡金の支払義務を履行していない前提下で、胡氏と陳氏は、会社からの業績補償金の支払請求を拒否する権利がある」と指摘した。

    企業が個別案件において先履行の抗弁権を主張できるか否か、つまり司法機関に認められるのかを判断する時に、以下の要素を考慮する必要がある。

    まずは、違約者が先履行の義務を負うかを確認する。これは先履行の抗弁権の前提条件である。実務において、通常契約の約定、法規定、商習慣などに合わせて判断する。『最高人民法院民商事判例集要』の関連論述は参考に値する。「一方の当事者が先行の履行義務を負うか否かを判断する時は、まず、契約において各当事者の義務の履行順序を明確に約定しているか否かを確認する。明確な約定がなければ、法定の履行順序があるか否かを分析する。法定の履行順序がなければ、当事者間又は取引地の商慣習の有無及び商慣習の具体的な内容、各当事者が契約においてそれぞれの義務の具体的な履行時点を約定しているか否か、当事者一方の契約義務が相手の義務履行の条件として約定されているか否か、契約の全体的な調整、契約の性質、主旨、目的などの要素と結び付けて、当事者の締約時における真の意思表示を総合的に判断し、先履行の抗弁権を行使できるか否かを認定する。」

    次に、義務の「対等性」を考慮する。双方の義務履行拒否は「対等性」がなければならない。実務において、先に履行する当事者が付随義務/従たる給付義務のみを履行していない状況下で、後に履行する当事者がそれを理由に主たる給付義務を拒否する場合、裁判所に認められない可能性が高い。例えば、(2022)京03民終13061号事件において、北京市第三中級裁判所は、「M社は、X社が領収書を発行していないことを理由に、先履行の抗弁権を有し、かつその支払条件が成就しないことを主張した。北京第三中級裁判所は、先行履行の抗弁権を享有する各義務は通常、対等性があり、広告配信契約において支払義務と対等の義務は広告配信義務であると判断する。一審裁判所は、X社の広告配信義務は履行済みで、M社がX社の領収書未発行のみを理由に支払を拒否することに根拠はないと認定した。又、一審裁判所がX社の支払遅延による違約金の主張を認めたことも不適切ではない」と指摘した。

    最後に、先に履行する当事者が違約した後、後に履行する当事者は状況に応じて、その先行履行の抗弁権を明示しなければならない。中国最高裁判所の『民法典契約編の理解と適用』によると、先履行の抗弁権の行使を明示する必要があるか否かは、状況によって検討しなければならない。先に履行する当事者が履行不能、履行拒否、履行遅滞になった場合、先に履行する当事者は知っていると推定できるので、後に履行する当事者が自発的に明示する必要はない(もちろん、先に履行する当事者が履行を請求した場合、後に履行する当事者は明確に回答しなければならない)。しかし、先履行の義務を負う当事者の履行に重大な瑕疵がある場合、又は一部のみが履行された場合、信義誠実の原則に基づき、後に履行する当事者は先履行の抗弁権を行使するには、損失の拡大を防止するため、相手への通知、かつ相手に立証、解釈、是正の機会を与えなければならない。先に履行する当事者が、給付義務のすべてが履行済みだと思っている可能性があるからだ。そのため、このような状況になった場合、後に履行する当事者は速やかに相手に通知しなければならない。

    上記の纏めとして、相手が先に違約した場合に、当事者は上述の要素を慎重に考慮した上で、先履行の抗弁権の行使を主張することができる。何も考えずになげやりになってはならない。さもなければ、かえって自分に違約のリスクを招くことになるかもしれない。