「法務二部」へようこそ
kittykim@hiwayslaw.com
+86 139 1742 1790
  • English
  • 中文
  • 従業員が海外で治療を受けるために病気休暇を申請した場合、使用者は拒否できる?

    従業員が海外で治療を受けるために病気休暇を申請した場合、使用者は拒否できる?

    タイトルを見ると、肯定的な意見を持つ者もいれば、否定的な意見を持つ者もいる。しかし、この問題は一概に論じることはできない。

    まず2つの判例を見てみよう。

    判例1:詹さんは2019年12月25日に中国の病院で診察を受けた際、椎間板性足腰痛と軟組織損傷と診断され、医師から1ヶ月間病気休暇が必要という旨の診断書を受けとった。当日中に、詹さんは同僚に病気休暇届をK社へ郵送してもらい、その後飛行機でカナダに向けて出発した。その後、新型コロナウイルスの流行により、詹さんは予定通りに帰国し、出勤することができなくなった。K社の質疑に対して、詹さんは、「カナダに行った目的は治療のためだった」と主張した。K社はその理由に納得できず、最終的に詹さんが行い及び無断欠勤を理由に詹さんとの労働関係を解除した。二審において、詹さんは海外での受診状況を証明する公証認証書類を提供したが、裁判所に認められず、「K社による労働関係の解除が合法である」と認定された(詳細は(2021)上海01民終3292号をご参照ください)。

    判例2:袁さんは2016年8月1日から2016年8月14日まで、切迫早産のため2週間の病気休暇申請し、M社はこれを認めた。2016年8月5日、袁さんは出産準備のために米国ヒューストンに赴いたが、病気休暇期間満了後も出勤せず、米国の医師が発行した「自宅での病気休暇を提案する」という旨の「証明書」をM社に提出し、病気休暇延長の申請をした。M社は上述の「証明書」の真実性を認めず、病気休暇の継続を許可せず、予定通り出勤することを求めたが、袁さんがこれに応じなかったため、最終的に無断欠勤を理由に一方的に労働契約を解除した。労働仲裁機関は袁さんの請求を棄却したが、一審と二審はいずれも袁さんからの労働関係回復の請求を認めた。

    では、従業員の海外での病気休暇申請にどのように対応すれば良いのか?

    あるHRから、以下のような質問があった。規則制度において「海外の医療機関が発行した病気休暇証明書は認めない」ことを定め、これによって病気休暇申請手段を徹底的に断ち切ることは可能か?以下のシーンを想像しよう。従業員が海外の親会社に出張中、不注意で転んで怪我をし、入院して治療を受けた。その場合、会社は当該従業員の海外での治療期間中の病気休暇を拒否することができるだろうか?恐らく無理だろう。しかし、従業員が他市や他国で勝手に病気休暇を取得する可能性を減らすための方法として、規則制度において「やむを得ない事由を除き、従業員は勤務先所在地の医療保険資格を持つX級レベルの病院にて診療を受けるものとする」と規定を定めておくことが考えられる。

    次に、従業員がわざわざ国外に赴き、外国での受診を申請する場合、一般的に会社は認めない権利がある。原因は主に2つある。その一つは、基本的にすべての疾患は中国国内の異なるレベルの医療機関で治療でき、従業員は海外での治療の必要性を証明しにくい点。もう一つは、海外での診察を受けることは、つらい思いをして長時間の移動に耐えることを意味し、その合理性も通常は認められないからだ。注意すべきことは、海外での受診を会社が事前に承認し、または明確に異議を唱えずにいたら、従業員が病気休暇の延長を申請し、かつ資格のある医療機関が発行した証明書を提出した場合に、会社が従業員の申請を拒否することのリスクが相当高まると思われる。例えば、判例2の袁さんの請求が裁判所に認められた重要な原因は、袁さんが「2016年4月にM社に対して出産のために米国に行くことを告知していたこと、2016年8月1日に休暇を申請し、双方が2016年7月に病気休暇について数回やり取りを行っていたこと、M社の要求に応じて相応のカルテを提出した」ことを証明するメールの受送信履歴を提供できたことにある。袁さんは米国での「病気休暇証明」を提出し、これによってアメリカでの病気休暇が正当であることが証明され、裁判所に認められた。

    第三に、従業員が外国での滞在期間中に、病気休暇を申請した場合は、会社が許可するか否かは、状況に応じて判断すべきである。例えば、判例1の詹さんは国内の病院からの病気休暇診断書を以って椎間板損傷による病気休暇を取得したが、実際に以前から航空券を用意しており、会社に知らせる十数時間前にはカナダに向けて出発していた。裁判所は上述の事実により、詹さんは単なる休暇のために出国し、病気休暇の必要は無かったと認定した。更に、新型コロナウイルスの蔓延により、詹さんは予定通りに帰国することができなくなった後、中医師の診療を受けるためにカナダに行くことを主張したが、裁判所は前述の事実により、詹さんの主張が常識に合わないと判断し、病気休暇の真実性を認めなかった。実務において、従業員が海外で休暇中や出張中に病気休暇を申請した場合、会社は病気休暇に係る資料を慎重に審査し、審査を経て規定に合致すると判断した場合、それを承認する。偽造の疑いがあるなど問題を発見した場合、従業員に補足資料を提出させ、状況に応じて最終的判断を下すよう勧める。