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    労働関係回復に係る賃金支払問題

    A社は従業員張さんとの労働契約を解除した。張さんはA社による労働契約違法解除を理由に仲裁機構に対し労働仲裁を提起し、A社との労働関係回復することの他、A社に対し労働契約解除決定日から判決確定日までの賃金支払不足分及び受領すべき賃金収入の25%相当の賠償金を支払うよう請求した。労働仲裁、訴訟を経て、裁判所は労働関係回復の請求及び賃金支払不足分の支払請求については認めたが、賠償金の支払請求は認めなかった。

    実務では、雇用企業が裁判所から労働関係の回復を命じられた場合、法律では、賃金支払不足分をいかに支払うかについての規定が明確ではないため、雇用企業はどうしたらいいのか分からず困惑する。主に以下の二つの問題に触れる。

    一、賃金支払不足分の起算日

    『労働部弁公庁による労働争議案件の処理のいくつかの問題に関する返信』(労弁発〔1997〕15号)の規定では、仲裁委員会又は裁判所から労働関係回復の裁決又は判決が下された場合、雇用企業は労働契約解除の決定日から賃金支払不足分を支払うものとされていた。しかし、当該文書は廃止され、その他に統一的な規定は見られない。実務においては、地方によって規定が異なる。例えば、『北京市高級人民法院、北京市労働争議仲裁委員会による労働争議案件の法律適用問題に関する研究会の会議紀要』では、労弁発〔1997〕15号と同じ意見を表明している。『上海市企業賃金支払弁法』第23条の規定によると、このような場合は、雇用企業は調停、仲裁及び訴訟期間の賃金を支払うものとしている。実務においても、上海の裁判所は前述の規定に基づいて判決が下されている(例えば、上海二中院(2016)滬02民終7627号民事判決書)。

    二、賃金支払不足分の支払基準の確定

    今のところ、中国における統一的な法律規定はないが、一部の地方では特別な規定が明確にされている。例えば、『上海市企業賃金支払弁法』第23条には、「賃金支払不足分の支払基準は労働契約解除前の12ヶ月の労働者本人の平均月給によって確定する。」と規定している。『北京市高級人民法院、北京市労働争議仲裁委員会による労働争議案件の法律適用問題に関する研究会の会議紀要』では、下記の様に状況によって異なる基準を明確にしている。手続の瑕疵による場合は、最低賃金基準により支払不足分の賃金を支払い、実体の問題による場合は、労働者の通常通りの賃金基準により支払不足分の賃金を支払う。

    そのほか、多くの企業は賃金収入の25%相当の賠償金支払の要否に対して疑義を抱いているが、労部発〔1995〕223号第3条によると、雇用企業による労働契約違法解除で労働者が賃金収入の損失を受けた場合に、労働者に対しその受領すべき賃金収入の他に当該賃金収入の25%相当の賠償金を別途支払う必要がある。本件の張さんもこれを根拠として主張を出したわけだが、『労働契約法』第85条によると、雇用企業は期日通りに満額で労働報酬を支払わず、労働行政部門から支払を命じられた後もなお支払わない場合、労働者に対し賠償金を支払わなければならない。つまり、実務において、基本的に『労働契約法』第85条に基づいて、賃金収入の25%相当の賠償金を支払不足分の賃金に計上しない。