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    中国における「商品化権」保護の司法実務動向

        最近、中国最高人民法院は、「喬丹」商標事件の再審理において、「自然人が法に従い氏名権を有する」ことを切り口として、「喬丹体育株式会社が、他人が先に氏名権を有する氏名を勝手に商標として登録し」、それを商標として関連商品に使用することにより、著作物の権利者の許可を受けたものである、又は著作物の権利者とその他の特定のつながりがあるかのように大衆の誤解を招いたため、商標法第32条の規定(商標登録出願は、先に存在する他人の権利を侵害してはならない……)に違反するものと判断した上で、一審、二審判決を取り消し、又、商標評価委員会に対し「喬丹」に係る三つの中国語商標を改めて裁定するよう命じた。本件判決によって、知的財産業界において、「商品化権」に関連する事例は、ホットトピックとなっている。

        当該判決は「偉大な判決」と呼ばれているが、それで商品化権が司法実務において完全に認めらると判断すれのは、いささか楽観的過ぎると思われる。

        当該判決のロジックは概ね以下の通りである:『民法通則』第99条及び『権利侵害責任法』第2条で規定される氏名権が、商標法第32条の「先行権利」(注:先に存在する他人の権利)に該当する係る商標の登録が、先に存在する他人の氏名権を侵害した商標法第32条の規定に違反した商標の登録を許可するべきではない。おそらく裁判官も、『民法通則』が立法当時の状況に制限され、氏名権についてその経済的属性が排除されたことを意識したため、『広告法』などを引用し、「一定の知名度を有する自然人がその氏名を商業的に利用することにより、経済的利益を取得する」ことを詳しく論証したのであろう。氏名権が『商標法』第32条で規定される「先行権利」に該当することの妨げを除去したことで、実質的に『民法通則』における氏名権が拡張されたと思われる。

        その直後、2017年1月10日に最高人民法院が公布した『最高人民法院による商標の権利付与・権利確定に係る行政案件の審理の若干問題に関する規定』(以下では、「新司法解釈」という)第18条では、「その他保護を受けるべき合法的権益」が商標法で規定される「先行権利」に含まれると明確にされていると同時に、三つの条件、即ち、①一定の知名度を有する、②関連大衆が、当該特定の名称を当該自然人のことを指すと判断している、 ③当該自然人の名称と当該自然人の間に安定な対応関係が構築されている(備考:商標評価委員会による「唯一」の対応基準と異なる)を満たしている場合、裁判所は係争商標が当該自然人の氏名権を侵害したと認定するべきであると規定している。従って、商標の権利付与・権利確定案件において、知名度を有する人の氏名に係る保護の規則と条件が比較的に明らかになる。

        しかし、吟味すべきことは、裁判官が当該判決の文末の裁判根拠において、「……『最高人民法院による不正競争民事案件の審理の法律適用の若干問題に関する解釈』第6条第2項……を参照して、以下の判決を下す……」という表現したことである。上記の司法解釈第6条第2項には、「商品経営において使用される自然人の名称は、不正競争禁止法第 5 条(3)項に規定する「氏名」と認定しなければならない。一定の市場知名度を有し、関連大衆が周知している自然人のペンネーム、芸名などは、反不当競争法第 5 条(3)項に規定される「氏名」と認定することができる。」と規定している。『不正競争禁止法』第5条第(3)項では、「他人の企業名称又は氏名を無断で使用し、他人の商品であると誤認させること。」を不正の手段の一つとしている。従って、特定の時期における司法実務に対する研究結果によっては、一部の案件について、“氏名権商標法の「先行権利」”というルートではなく、直接『不正競争防止法』の角度から着手する方法も考えられる。
    氏名の「商品化権」以外に、実務において、作品名称及び人物名称を「先行権利」と認められるか否かも注目を集めている。近年の事件によれば、実務上の観点は一致していないようである。例えば、上海第一中級人民法院による「クレヨンしんちゃん」に係る再審判決、北京第一中級人民法院による「TEAM BEATLES添·甲虫」に係る商標異議申立再審行政紛争事件の判決、北京高級裁判所による「邦徳007 BOND」商標事件の判決及び「功夫熊猫KUNGFUPANDA」事件の判決などは、映画名称又は人物イメージ及びその名称が一定の条件下で「先行権利」として保護を受けるべきであることを認めている。一方、「黑子のバスケットボール」商標紛争事件において、北京知的財産権裁判所は、「係る作品名称及び人物名称が法定の「先行権利」にならない場合、先行権利者又は利害関係者により当該商標登録行為を阻止することはありえない」と述べ、結局2001年『商標法』第41条第1項の「その他の不正な手段」及び『最高人民法院による商標の権利付与・権利確定に係る行政案件の審理の若干問題に関する意見』第19条を関連作品の名称を保護する法的根拠とした。

        上記のような実務上の議論があるにもかかわらず、前述の新司法解釈第22条では、作品名称又は人物名称が、①比較的高い知名度を有し、②それを商標として関連商品に使用することにより、著作物の権利者の許可を受けたものである、又は著作物の権利者とその他の特定なつながりがあると関連公衆を誤認させ得る、という二つの条件をみたしている場合には、係る作品名称又は人物の名称は先行権利として認めることを明確にしている。

        前述した諸判決では、実務における異なる観点を示している。また、前述の新司法解釈の公布後に、最高人民法院は記者会見において「作品名称、人物名称に対する保護は、見分け方を慎重に把握するべきである……北京市高級人民法院がこのような案件に対して事前報告を要求しているとのこと……最高人民法院も適切な方法によりこのような案件に注意を払う ……」と強調している。上記のことから、作品名称又は人物名称の先行権利該当可能性について、あまりに楽観視しないほうが良いと思われる。つまり、関連権利者は作品名称や人物名称に係る案件を取り扱う際に、司法機関の判断規則及びその傾向や変化に注意を払い、比較的適切な角度から提訴又は応訴する必要がある。