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    株主の知る権利VS会社営業秘密の保護

        株主が会社の経営状況を把握し、関連する株主権益を確保するために、『会社法』第33条では、株主が①会社定款、②株主会の議事録、③董事会会議の決議、④監事会会議の決議、⑤財務会計報告及び⑥会計帳簿を閲覧する権利(所謂株主の知る権利)を定めている。しかし、これらの資料は通常会社のビジネス計画や生産経営策略や売買情報など『不正競争防止法』で規定される営業秘密に該当する情報に係わる。よって、株主の知る権利を制限しないと、株主が会社と競業したり、又はその他の不正利益を獲得したりする場合に、株主が会社の営業秘密を獲得するための手段として知る権利を濫用する可能性が高い。

        『会社法』第33条では上述の①~⑤の会社資料の閲覧権についていかなる条件も設定されておらず、会社会計帳簿の閲覧権については、株主に対し「書面による請求書」の提出、また「その中で目的を説明する」よう要求している。同時に、「会社は、合理的な根拠に基づき株主の会計帳簿閲覧が不当目的によるものであり、これにより会社の適法な利益が損なわれるおそれがあると判断した場合は、閲覧を拒否することができる」と規定している。 

        株主の知る権利紛争案件では、焦点の殆どが株主の閲覧請求の目的が正当であるか否かにある。現時点で、法律及び最高裁による司法解釈では正当性の判断要素と基準を規定していない。一方、司法部門の典型的な観点は、「株主の知る権利に対して信義と善意の原則に基づき制限を加えるべきである。……裁判官が具体的な事件において相応の原則に従って解決する」ということである(詳細は2005年上海高裁による『株主が会社に対する知る権利の行使を請求する紛争案件の審理における若干問題に関する回答』を参照)。

        実務において、通常「立証責任について、……会社は不当目的という抗弁の合理性を証明すべきである」(出所:『2006年江蘇省裁判所系統会社法難解案件検討会概要』)、また、既存の判決によると、会社は通常、(1)株主が、別途設立又は経営に関与する会社を保有し、かつ当該会社と被告である会社との間に競争関係があること(一般に、両社の経営範囲が類似するかどうかで判断される);(2)株主が閲覧しようとする資料に営業秘密に係わる情報が含まれており、かつそれらの情報が競争相手会社に知られた場合不利な結果をもたらす、などから証明する。

        実際、裁判官は具体的な事件を審理する際に、株主の被告会社における業務や事件に関わる会社の設立時期や具体的な製品及び市場競争状況など多くの要素を総合的に考慮する。例えば、[2014] 滬一中民四(商)終字第1633号判決書において、裁判所は以下のことを述べた。「王さんは同時にD社の株主でもあり、かつその前後において両社の法定代表人を務めていたことがあり、D社と会社(付注:被告)の間に利害衝突及び競争関係が存在している。そのため、本裁判所は、会社が王氏の会計帳簿閲覧の請求に不当目的があると判断したことの合理性を容認する。」 また、 [2008]二中民終字第14810号において、裁判所は、「T社の経営範囲とZ社の経営範囲は同じであるが、T社が先に成立し、それ以来水処理設備の製造と販売に従事している。Z社は成立時に張氏がT社の株主であり、かつZ社の法定代表人を務めていることについて明らかに知っていたはずである。従って、Z社はT社との間に競争関係があるとしても、張氏のZ社会計帳簿閲覧の請求に不当目的があると判断することは事実的根拠を欠く」、と分析している。つまり、会社は関連要素を総合的に考慮し、かつ不当目的の抗弁が合理的であることを証明できる相応の有利な証拠を集めるべきである。

        そのほか、特殊な状況下で、裁判官は株主が一部の資料を閲覧することを認めることもある。前述の上海高級裁判所による「株主が会社に対する知る権利の行使を請求する紛争案件の審理における若干問題に関する回答」では、下記のように述べている。「原告が退職前に会社の関連管理職を務めており、例えば総経理として対外的に業務契約を締結したりするなど、社内にも相応の職権を行使していた場合に、被告が主張した会社の営業秘密は(原告に対して)成立せず、つまりそれらの事実は、抗弁成立を阻却する事由となる。但し、原告退職後の会社秘密については、あくまで原告が同類の業務に従事する会社の株主を務めているため、(法により)保護されるべきである。このような場合、二つの段階に分けることができる。原告退職前においては関連資料については原告が閲覧することができること、、原告退職後においては関連資料については原告が閲覧することができないことが考えられる。」 また、北京第一中級裁判所は、[2013]一中民終字第9866号において類似の方法を採った。「原告が競争関係のある会社を設立した後、新設会社と被告会社にある競争関係を排除できず、新設会社の抗弁事由の正当性と合理性を証明できない場合に、新設会社設立後の原告による被告会社の帳簿閲覧請求は認められない」とされた。よって、原告株主は実際の状況に応じて、融通をきかせ、合理的に閲覧の範囲を主張する必要がある。