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    悪意のある知的財産権侵害訴訟にいかに応対するか?

        甲社はある特殊設備の製造と販売を行うため、政府主管部門に対し資格審査許可を申請した。しかし、審査の過程において、同業他社はその実用新案が新規性を備えないと知りながらも、甲社に実用新案権侵害を訴えた。また政府主管部門に対しても甲社が他社の知的財産権侵害の嫌疑を訴え、審査許可の要求を満たさないことを告発し、甲社の資格獲得を阻止しようとした。知的財産権の権利者が訴訟により自らの権利を守ろうとすることは非難するべきほどでもないが、その目的が自らの合法的な権益を保護するためではなく、ライバルに打撃を与えるためであるとすれば、権利保護行為の正当性、適法性には明らかに問題である。特に権利者は往々に訴訟前の禁止令、訴訟前又は訴訟手続中の財産保全を申し立てることで、相手方の生産経営に不利な影響を与える。仮に権利者が途中で訴訟を取り下げたり、最終的に敗訴となったとしても、権利侵害として訴えられたライバル会社は貨物を寝かせていおいたり、大切な取引機会を逃す、応訴費用の負担、さらに名誉が損なわれる等様々な損失を受けることは避けられない。

        現時点で、中国の法律では知的財産権の権利者の悪意ある訴訟について統一的な規定はないが、実務においては若干の判例がある。又、2011年版の『民事案件案由規定』では「悪意ある知的財産権訴訟による損害責任紛争」を追加し、権利者の悪意のある知的財産権侵害訴訟に対して損害賠償を請求する法的根拠となっている。

        実務において、裁判官は当該類別の事件を審理するに当たって、主に『民法通則』第106条第2項、及び『権利侵害責任法』第6条第1項の規定を適用し、悪意ある訴訟行為の構成を判断する。、即ち不法行為の四つの構成要件(主観的過失、侵害行為、損害結果及び侵害行為と損害結果の因果関係)により権利者の不法行為有無を認定する。その内、権利者が悪意があるのかどうかの判断が、最も重要である。しかし、形式的に言うと、権利者による知的財産権権利侵害訴訟は適法的であるため、仮に特許が無効とされても、どのような条件が権利者に主観的過失(即ち「悪意」)があるということを認定する根拠になるのかは、判断の難しいところである。現時点で立法と司法解釈には統一的な判断基準がなく、裁判所や裁判官によって、その認識に、ばらつきがあるため、類似の事件について異なる判決を下す場合もある。

        一方、既存の判決例はある程度、関連当事者に、知的財産権の権利者に悪意があることを証明する参照基準を提供しうると言える。
    全体的に言うと、権利者の悪意有無について、裁判官は通常、①権利者が、その請求に事実上、又は法律上の根拠を欠くことを知っているか否か、②相手方の合法的な権益を侵害する不正な目的があるか否か、という二つの面から分析する。

        前者については、通常、権利者の研究開発及び特許出願の日付や技術評価報告出願者の関連技術の公知状況及び現有の技術に対する認識などを根拠に権利者の悪意の有無を分析する。例えば、2003年、「消防用ボールバルブ」という実用新案の権利者の悪意ある訴訟事件において、南京中級裁判所は、袁氏が1977年から長期にわたってボールバルブ工場の現場主任又は工場長を務め、当該分野の専門業者としてボールバルブに関連する国家基準を熟知しているはずで、、国家基準で十分に開示された技術考案を実用新案として出願することは、信義誠実の原則に背き、「袁氏が故意に他人の権利侵害を目的として、悪意ある出願及び最初から無効と認定されるべき特許権をもち、特許権侵害としてXX会社を訴え、また訴訟において××社に損失をもたらしたため相応の民事賠償責任を負うべきである」と認定した。従って、当事者は、事件に係わる特許が無効とされた以上、権利者の悪意あることを証明できると簡単に結論づけることはできない。権利者が「知っている」ことを証明することが、実際に必要かつ肝心である。

        後者については、通常、知的財産権の権利侵害訴訟開始後において、権利者の関連行為(例えば訴訟により係る業界の顧客に対し、被告に不利な言論を広めたり、被告の商談中の取引を妨害するなど)により判断する。つまり、権利者が悪意をもって訴訟を行うのか否かについては、客観的な事実により証明する必要があり、根拠のない推測を行ってはならない。

        そのほか、実務において、仮に悪意ある知的財産権訴訟による損害責任紛争訴訟で勝訴になったとしても、損害賠償額について認められるのは、、無効審判請求費用、訴訟費用、弁護士料金及び生産経営が受けた影響による直接損失などを含む直接的経済損失のみに限られる。