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    中国における知的財産権非侵害確認訴訟について

        実務において、特許権者又は商標権者が競争相手又はそのディーラーに対し権利侵害警告書簡を送付することはよくある。但し、権利侵害警告書簡を送付した後、訴訟などの後続措置を講じない場合は、被警告者の正常な生産経営ないし名誉に影響を及ぼす。問題になるのは、この場合、被警告者はがかえって不正競争防止確認訴訟により救済を受けることができないということである。

        よって、権利者が知的財産権を濫用して競争を制限することを防止し、被警告者の受動的な立場を改善するために、知的財産権非侵害確認訴訟が現れた。知的財産権非侵害確認訴訟とは、特定の知的財産権により不利益を受けた者が当該知的財産権の権利者を被告として提起し、自分の行為が当該知的財産権を侵害しないことについて確認を求める訴訟を指す。 

        中国の現行の法律法規では、知的財産権非侵害確認訴訟について明確な規定をしていない。最高裁判所の一部の司法解釈及び若干の判決では、知的財産権非侵害確認訴訟の種類、受理条件、訴訟請求事項などに関わっており、実務においても当該類別の訴訟取扱ガイドラインとなっている。以下に、詳しく解説する。

        非侵害確認訴訟の種類について、『民事案件案由規定』では、3級案由の「知的財産権非侵害確認訴訟」を三種類の4級案由に分けている:(1)特許権非侵害確認訴訟紛争;(2)商標権非侵害確認訴訟紛争;(3)著作権非侵害確認訴訟紛争。上述の三種の紛争以外に、被警告者が営業秘密、ドメイン名使用権等の権利について非侵害確認訴訟を提起することができるかについては、明文化されていない。しかし、最高裁判所の『改定後の<民事案件案由規定>の配布に関する通知』には、「裁判所は当事者に適用できる相応の案由がないことを理由に受理しない、又は訴訟を却下する裁定を下してはならない。4級案由として規定されていない場合は、相応の3級案由を適用することができる。」と強調しているため、実務において、これを根拠に前述の三種以外の知的財産権を対象とする非侵害確認訴訟を受理する裁判所は多くなってきている。例えば、(2010)一中民初字第14719号(植物新品種権に係る非侵害確認訴訟)はその一例である。

        非侵害確認訴訟の受理条件については、民事訴訟法で規定されている一般的な受理条件を満たすほかに、最高裁判所による『特許権侵害紛争案件審理の法律適用の若干問題に関する解釈』では、特許権非侵害確認訴訟に適用される三つの条件を明確にしている:(1)権利者が特許権侵害の警告書簡を送付したこと;(2)被警告人又は利害関係者が書面で権利者に訴権の行使を催告したこと;(3)権利者が書面催告の受領日から1ヶ月以内又は書面催告の送付日から2ヶ月以内に、警告の撤回をせず、訴訟提起もしなかったことである。実務において、司法機関は、特許権以外の知的財産権非侵害確認訴訟についても、上述の規則を適用する(例えば、北京数字天堂信息科技有限責任公司と南京烽火星空通信発展有限公司との管轄異議再審紛争事件)。従って、被警告人は書面催告の送付及び関連証拠の保存に特に注意すべきである。

        非侵害確認訴訟の訴訟請求事項、特に被警告人が関連の損失賠償を主張できるか否かについては、最高裁判所2003年『特許権侵害紛争案件審理の若干問題に関する規定』(会議検討稿)において、「特許権者又はその利害関係人の警告行為が被警告人のその他の権利を侵害した場合は、被警告人は人民法院に対し警告人の侵害停止、損失賠償、侵害状況の除去、謝罪を命じるよう一括で主張することができる。」と解釈している。司法実務においても、この観点を肯定された判決がある。

        知的財産権非侵害確認訴訟制度の存在は、権利者に損害賠償リスクを回避するために、警告の送付について慎重に考えさせる一方、被警告人は、実際の状況に応じ、前述の司法規則を利用して非侵害確認訴訟を提起することにより、自分の合法的な権益を守ることができる。