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    「事実に基づいた」営業誹謗に対して、「No」と言えるか?

        B社がA社を訴えた営業秘密侵害事件において、B社は一審で勝訴した。そしてB社は会社のウェブサイトにおいて「A社は営業秘密侵害により巨額の賠償を支払う恐れがある」というニュースを発表し、一審判決書も掲載した。その結果、A社の販売量は急減してしまった。その直後、B社はC社とのプロジェクト商談においてA社に勝つために、判決書をメールでC社に送付した。C社は社内検討した結果、書面によりA社に商談を終了する旨の通知を送った。A社は憤然として不正競争を理由にB社を相手に訴訟を提起した。

        B社の行為は『不正競争防止法』第14条で規定される営業誹謗行為に該当するのだろうか。該当しないのであれば、『反不正当競争法』第2条の一般的規定により規制されるのだろうか。これらについて、実務において議論がある。

        中国『不正競争防止法』第14条には、「事業者は虚偽の事実を捏造、散布し、競争相手の営業上の名誉或いは商品信用を侵害してはならない。」と規定している。字面によれば、「虚偽の事実」は、営業誹謗の前提とされている。言い換えれば、事実が客観的に存在する場合は、事業者の散布行為は営業誹謗に該当しないと言える。長期に亘り、中国の司法機関は、「虚偽の事実」の字面に囚われているため、関連当事者は『不正競争防止法』第14条に基づき救済を求めることができない。又、司法機関は『不正競争防止法』第2条の適用について大変慎重であり、本件のような事件において第2条を適用する先例がないようである。

        その一方で、世界知的所有権機関による『反不正当競争保護に関するモデル規定』(1996年)では、「不合理な陳述」、即ち客観的事実を不公正、又は不精確又は偏った陳述することを営業誹謗の範疇に入れた。又、中国競争法分野の専門家も、米国、日本、EUなどの国と地域の法律、司法規則を研究した上で、『不正競争防止法』第14条の関連用語の意味を拡張的に解釈し、不正競争を目的として、断片的な事実又は不合理な事実などを散布する行為を規制範囲に入れようと呼びかけてきた。 

        近年来、本件と類似する事例が多発しているため、司法実務の姿勢に新たな変化が起きた。今年、北京奇虎科技有限公司等と騰訊科技(深圳)有限公司等との不正競争紛争上訴事件(「奇虎VS騰訊事件)という)において、北京市第二中級裁判所は、次の通り指摘した。「営業誹謗に該当するか否かを判断するには、その根本的な要件は、事業者がミスリードの手段により競争相手の営業上の名誉、商品の名声に損害を与えたか否かにある。本当の事実を一方的に陳述することにより他人の営業上の名誉をけなすことは、……虚偽の宣伝と同様に容易に人に誤認させ、関連消費者に係る商品に対する認識の間違いを生じさせるに足り、更に消費者の判断を左右し、競争相手の営業上の信用、商品の名声にマイナスの影響を及ぼし、その利益を損なう。……『不正競争防止法』第14条で規制される状況に該当すべきである。」 

        この判決は、競争相手による「事実に基づいた」営業誹謗を受けた場合、法的救済を得られない事業者に対し希望を与えたと思われる。

        尚、もう一つ留意すべき問題は、ネットワークを利用した営業誹謗である。ネットワークの迅速な発展に伴い、営業誹謗行為は従来の展示即売会でビラをまいたり、入札募集において悪意に偏った事実でクレームをつけるなどの手段から、ネットワークを利用し情報を散布するという手段に等、多岐にわたってきている。ネットワークにおける散布が迅速かつ広範囲に及ぶため、その影響もより深刻となる。新しく公布された『情報ネットワークを利用して人身権益を侵害する民事紛争案件の審理における法律の適用に係る若干問題に関する規定』第11条には、ネットワークユーザー又はネットワークサービス提供者は誹謗などの手段により、事業者に対する公衆の信頼を損ない、その製品又はサービスの社会的評価を低下させた場合、権利侵害責任を負わなければならないと明確に記されている。営業誹謗を受ける事業者にとって、これも問題解決の重要な手掛かりとなると考えられる。

        上記の纏めとして、「事実に基づいた」営業誹謗について、被害事業者は不正競争防止法又は情報ネットワークの関連規定に基づき法的救済を求めることが可能であると言える。