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    匿名組合のリスクマネジメント

        実務において、匿名組合(中国では、匿名投資という)というのはよく見られることである。但し、現行法令の下で、匿名出資者が直面する法的リスクが少なくないことも事実である。主に係るリスクは、以下の通りである。

        一、匿名出資者の株主権が認められにくいリスク。実務では、株主権確認請求訴訟に対して、裁判所は、統一的な判断基準がなく、又全体的に、厳しい姿勢を採っていると言える。

        二、名義出資者によるリスク。例えば、名義株主が無断で持分を譲渡したり抵当に入れたりした場合、匿名出資者は、通常双方間に締結された匿名組合契約に基づき名義出資者の違約責任を追及することしかできない。又、名義株主の債務不履行等によりその名義下の持分が司法機関より凍結又は強制執行されるリスク等もある。

        では、匿名出資者は如何にその法的リスクを抑制できるのか?

        一般的に、匿名出資者は以下の5つの方法において措置を採って関連のリスクを抑えることができると考える。

        先ず、効果的かつ厳密な匿名組合契約を締結すること。『最高裁による「中華人民共和国会社法」の適用に関する若干問題についての規定(三)』では、「……実際の出資者及び名義出資者が、名義出資者が名義株主となり、実際の出資者が出資金を提供して投資権益を享有するという契約を締結した場合、実際の出資者と名義株主との間で契約効力について争議が生じた際は、中国契約法の第52条で規定された無効事由に該当しなければ、裁判所は当該契約が有効であると認定すべきである」と規定しており、基本的に匿名組合契約の法的効力を認める姿勢を採っている。よって、実際の出資者は、名義出資者と全面的かつ自らの権益を有効に保護できる匿名組合契約を締結する必要がある。尚、合法的かつ効果的な匿名組合契約も匿名出資者の株主権確認請求訴訟において不可欠な証拠である。

        次に、出資等に関する証拠をきちんと保管すること。実際に出資を行ったことに関する証拠の存在は、匿名出資者の株主権が認められるかどうかの実質的要件でもあり、匿名出資者が、名義株主と紛争が生じた際に自らの権益を保護するためにも、匿名出資者は出資に関する原始証憑を適切に保管しなければならない。
    三番目は、会社の定款における関連規定の妥当性を確保すること。名義株主の無断持分譲渡によるリスクを低減するために、必要に応じて、株主が会社設立後何年以内は持分を譲渡してはならない等と定款内に規定しておくことが考えられる。また、匿名出資者の株主権確認段階でのハードルを防止するために、匿名出資者が表面化される株主に変更することに関して制限がないことを確認しておく。

        又、株主権確認請求訴訟を行う際、上記の条件のほかに、前述した司法解釈の規定によると、会社の他株主の半数以上の同意を得なければならない。実務において、他の株主の同意について、一般的に二つの状況が含まれる。一つは、匿名出資者が、株主の身分で会社の経営管理に参与している場合、他の株主の黙示同意を取得したと解される。もう一つは、他の株主による書面での同意を取得することである。前者の場合は、匿名出資者が関連の資料をきちんと保管しておくべきである。

        四番目は、名義株主の行為による法的リスクを抑えるためには、前文に言及された定款で持分譲渡に関する時間的制限を定める他、持分質入ということも考えられる。つまり、実際の出資者が名義出資者と匿名組合契約を締結すると同時に、名義出資者と借金協議書を結び、更に当該借金協議書に基づき持分質入協議書を締結し、且つ持分質入について株主名簿に記入しておく。そして、その上で、工商行政管理部門へ持分質入登記を行う。そうすることにより、名義出資者による無断持分譲渡行為を防止することが出来る。

        最後に、持分が司法機関より凍結又は強制執行されるリスクを低くするために、匿名出資者は、名義出資者候補者の経済能力、与信等を予め詳しく調査・確認した上で、信頼できる者を名義出資者として選定することが大切である。