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    権利侵害行為の訴訟時効の計算

    権利侵害行為は、侵害対象によって、物権を侵害するもの(例えば、他人の不動産を無断占有する)、商標権を侵害するもの、他人の生命健康権を侵害するものなどがある。継続的な権利侵害行為であるか否かによって、発生後に終了するもの(例えば、車で人に衝突する)、継続的なもの(例えば、長年にわたって他人の特許権を侵害する商品を製造する)に分けられる。

    権利侵害行為の通常訴訟時効はいずれも3年なのか?

    必ずしもそうではない。

    まず、主に以下の状況のような一部の権利侵害行為については訴訟時効が適用されない。つまり、3年の訴訟時効の制限を受けないということだ。

    (1)『民法典』第196条の「(1)侵害の停止、妨害の排除、危険の除去を請求する場合。(2) 不動産物権及び登記された動産物権の権利者が財産の返還を請求する場合。(3)養育費、扶養費又は扶助費の支払いを請求する場合。」

    (2)『民法典』第995条の「人格権が侵害を受けた場合、被害者は行為者に民事責任を追求する権利がある。」。被害者は権利侵害行為者に対して、侵害の停止、妨害の排除、危険の除去、影響の除去、名誉の回復、謝罪などを求める訴訟を起こすことができる。このような場合は、訴訟時効の制限を受けることなく、いつでも請求権を主張することができる。

    上記以外の権利侵害行為には原則として3年の通常訴訟時効が適用される。法律に別途規定がある場合を除き、権利者が権利の損害及び義務者を知ったか又は知ったと思われる日から計算する。つまり、中国では訴訟時効の起算日は、主観と客観の結合という原則に従い、客観的に権利が侵害された、主観的に権利者が権利の損害及び具体的な侵害者を知ったか又はか知ったとされる時からである。

    権利が侵害されたことをどう考えるか?以下の角度から分析、判断することができる。

    一、権利侵害行為の発生時点又は損害確定時点を権利損害の時点とするのだろうか?通常、権利侵害行為の発生時点は客観的に権利が損害を受けた時点である。例えば違約行為が発生した場合、権利者は損害を受けたという要件を備えている。しかし、損害賠償請求権については、損害が確定するまでは、損害賠償の内容が明らかではないため、通常、損害確定時点から起算する。(2017)北京01民初94号判決書において裁判官は、「人身損害事件の訴訟時効の起算点の認定について、被害者の負傷時点を容易に訴訟時効の起算点とするべきではない。本件において、馮さんが負傷し、治療が一通り終了し、各損失状況が明らかになってから訴訟時効の起算点を計算するべきである。従って、原告馮さんの提訴は訴訟時効を超えていない。」と指摘した。

    二、継続的な権利侵害行為の起算時点はどのように判断するのだろうか?継続的な権利侵害行為とは、同一の権利客体に対して継続的に、途切れることなく侵害を行う行為を指す。実務においてよく見られる継続的権利侵害案件には、権利侵害者が継続的に権利侵害製品を生産・販売すること、継続的に他人の動産又は不動産を不法占有すること、継続的にインターネットなどを通じて他人の人格権を侵害すること、継続的に汚染物質を排出することなどが含まれる。

    継続的な権利侵害行為の起算時点については、法律上の明確な規定がないため、司法実務において、観点が異なる。

    1つ目の観点は、権利侵害行為の終了日から計算するというものである。(2019)滬0115民初37458号判決書において裁判所は、「被告が長年をかけて天井内に作ったとしても、これは原告がこの期間中に自分の権利を一時的に譲渡したものであるため、被告が天井内に作ったセメント屋根と換気窓を取り壊し、原状を回復するという原告の訴訟請求は、法的根拠がある。裁判所は法に基づいて当該請求を認める。」とした。被告は、原告の主張は訴訟時効を超えていると弁解したが、これについて裁判所は、「継続的権利侵害行為の損害請求権の訴訟時効期間は権利侵害行為の終了日から起算すべきであると考えている。本件被告の上述の権利侵害行為は現在も継続しているため、原告が今となって提訴しても、訴訟時効を超えているとは言えない。」と指摘した。(2019)豫17民申138号の判決書において、裁判官は、「張さんは被申請人の提訴が訴訟時効を超えたと主張している。これについて、調査したところ、張さんは係争土地を占用しているので、継続的な権利侵害に該当する。訴訟時効はその権利侵害行為の終了日から計算するが、被申請人が提訴した時に、張さんは土地を返還していない状態にあるため、被申請人の提訴が訴訟時効を超えているという張さんの主張は認められない。」と指摘した。

    2つ目の観点は、権利者が権利の損害及び義務者を知った日か又は知ったはずの日から計算するというものである。最高裁判所は民法典の理解と適用において、「法律では、継続的権利侵害の債務の訴訟時効の起算について、特別な規定を加えていないため、継続的権利侵害の債務の訴訟時効の起算は『民法典』第188条の規定に従うべきである。3年の訴訟時効を超えた場合、損害賠償額は3年前までさかのぼって計算し、過去3年を超える損失分は賠償されない。」と指摘した。現時点で、著作権、商標権、特許権紛争の司法解釈はすべてこの観点を適用している。

    3つ目の観点は、訴訟時効はそれぞれ計算するというもの。権利侵害者の毎日の支払義務が変わるため、段階によって相応の訴訟時効の起算点を確定するというものである。(2021)粤01民終10310号の判決書において、本件は継続的な権利侵害行為に該当し、訴訟時効は権利侵害者の権利侵害終了日から計算し、また『民法総則』第189条の規定を適用すべきである(注:「当事者が同一の債務を分割して履行することを約束した場合、訴訟時効期間は最後の履行期限の到来日から計算する」)ため、その請求した占用料が訴訟時効を超えていないと原告の駿X会社の主張に対し、裁判所は、「一般賃貸借契約の取引慣行によると、賃貸料又は占用料は月毎に支払われるため、徳X旅館が毎月支払うべき占用料は異なる債務に属し、それぞれ訴訟時効を計算すべきである。本件において、駿X会社又は元の家屋財産権者と徳X旅館は占有費分割払いを約定していないため、第189条の規定を適用し、そのすべての請求はいずれも訴訟時効を超えていないという駿X会社の主張は成り立たない」と指摘した。

    実務において、訴訟時効切れか否かの判断は、状況毎に複雑で、不確実性がある。そのため、「法律は権利の上に眠る者を保護しない」ということわざの通り、権利者は訴訟時効期間の満了により勝訴権の得る機会を失わないように、積極的に早めに権利を主張するべきである。