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    退職者が無断で資料を削除した場合、会社はどうすればよいのか?

    実務において、一部の従業員は会社から支給されたパソコンや携帯電話などに個人情報や資料を保存し、退職時に個人情報の漏洩を防ぐため、関連資料を削除することがある。これは許容範囲の行為である。但し、一部の従業員は自らの鬱憤をはらす目的で、もしくはその他の理由で、業務メール、サーバーや共有ディスクなどに保存されている共有資料などを無断で削除する。このような行為が会社の業務に一定の不利な影響や支障をもたらすことは間違いない。特にその中に営業秘密や今後起こり得る訴訟に必要な証拠資料が含まれていた場合は、会社に大きな直接的損失と潜在的敗訴リスクをもたらすことになる。

    会社がこのようなリスクに対応するためには、まず、従業員による資料の無断削除行為に対してどのように責任追及をするかを把握しておかなければならない。

    一般的に言えば、具体的な状況によって、退職者の無断資料削除行為に対しては民事責任、刑事責任、行政責任の追及が考えられる。

    第一に、民事責任について。資料を削除した従業員は権利侵害責任を負う。『賃金支払暫定規定』第16条には、「労働者本人の原因で使用者に経済的損失をもたらした場合、使用者は労働契約の約定に従い経済的損失の賠償を求めることができる。」と規定している。従業員が退職時に会社の資料を削除して会社に損失をもたらした場合、会社は法に基づき従業員に賠償させる権利がある。上述の損失には、会社が資料を復元するための費用(例えば、(2017)滬02民終10169号事案において、裁判所は従業員に対して、資料復元の費用を賠償するよう命じた)、および会社にもたらしたその他の損失(例えば、(2021)粤0115民初17763号事案において、従業員が本人の37日間の仕事成果に係る資料を削除したことに対して、裁判所は一日当たりの賃金基準で賠償するように命じた)が含まれる。

    第二に、刑事責任について。無断削除行為は、コンピュータ情報システム破壊罪、生産経営破壊罪、商業秘密侵害罪の3つの罪に係る可能性がある。

    削除行為によりコンピュータ情報システムの機能、データ、又はアプリケーションが破壊され、損失額が法定の最低限度額に達した場合は、コンピュータ情報システム破壊罪と認定される。2020年にプログラマーの間で「せいぜいライブラリを削除しても、逃げれば大丈夫だ」という口癖が流行っていた。本当にライブラリ削除し逃げれば、通常耐え難い結果となる。例えば、(2020)滬0113刑初889号事案において、従業員の賀氏は会社のシステムデータを削除したため、コンピュータ情報システム破壊罪として懲役6年に処された。

    一方、削除行為により会社の生産経営が破壊された疑いがある場合は、通常、生産経営破壊罪と認定される。(2021)滬02刑終595号事案において、財務責任者であった徐氏は退職前に会社の会計帳簿と財務会計報告書などの資料を削除し、パスワードを教えなかったため、財務システムが作動できなくなり、会社に2万元余りの損失をもたらした。最終的に生産経営破壊罪として懲役1年に処された。

    司法実務において、コンピュータ情報システム破壊罪と生産経営破壊罪は競合するケースがある。例えば、従業員の資料削除行為がコンピュータシステムを破壊し、同時に生産経営を破壊した場合、どうすればよいのか。コンピュータ情報システム破壊罪と生産経営破壊罪については、破壊行為以外に、重要な区別がある。それは、法定の最低損害額が異なることである。コンピュータ情報システム破壊罪の最低損害額は1万元で、生産経営破壊罪の最低損害額 は5000元である。そのため、多くの会社は生産経営破壊罪として責任を追及するという手段を選ぶ。

    従業員が資料を削除すると同時に、自らコピーを保管したり、第三者に開示したりし、かつその関連資料が営業秘密に属する場合は、通常、営業秘密侵害罪になる可能性がある。

    第三に、行政責任について。『治安管理処罰法』第23条には、「企業の生産経営を乱し、正常な仕事が不可能な状態にあるが、まだ深刻な損失には至っていない場合には、警告又は過料を科すことができる」と規定している。第29条には、「国の規定に違反し、コンピュータ情報システムに保存、処理、伝送されたデータとアプリケーションを削除した場合は、拘留に処することができる」と規定している。

    以上のことから、会社は従業員により削除された資料の内容及び影響などに基づいて、可能となる責任追及の方向性を決め、相応の措置を採るよう勧める。