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    中国の個人破産時代はすでに到来しているのか?

    中国では、ここ数年、個人破産制度に係る立法を模索している。2017年6月15日、『個人破産制度の構築・実施に対する潘定心の提案への最高人民法院の返答』において、最高人民法院は、個人破産制度の実施を進める姿勢を示した。そして、台州、山東、深圳、浙江、江蘇、成都など多くの省・市も個人破産制度に対して探求・実行を進め、個人債務の整理に係る通知又は手引きが相次いで公布された。但し、その際の方針では、調停が依然として個人債務の集中整理の主な方式とされていた。2019年10月温州中級裁判所の判例がその適例である。当該判例において、温州中級裁判所は「約214万元の借金を抱えている債務者が重大な疾病に罹患している状況において、18か月以内に約3.2万元を返済すればよいこととする。但し、当該政策の前提は、債務者が、執行完了日より6年以内に世帯年収が1万を超える場合は、世帯年収の50%を未返済債務の返済にあてることを承諾したことにある。」と裁定を下した。

    『深圳経済特区個人破産条例』(2021年3月発効)は、中国の初めての個人破産に係る地方法規であり、中国個人破産制度を正式に構築するマイルストーンとも言える。その後、深圳市中級裁判所は、複数の象徴的な裁定を下した。

    • 2021年7月、初めての個人破産再生裁定。具体的には、債務者は再生計画に従い3年以内に元金を100%弁済するものとし、利息と遅滞金の返済が免除される。債務者が再生計画を厳格に執行しない場合は、債権者は債務者に対して破産清算を申請する権利がある。
    • 2021年11月、初めての個人破産清算裁定。具体的は、債務者に3年間の免責考察期間が与えられ、考察期間終了後、残余債務の免除を享受することができる。
    • 2021年11月、和解協議書の初承認。裁判所が個人破産和解手続終結裁定を下した後、債務者は和解協議書に従い債務を返済を行う。裁判所は個人破産の関連規定に従い当該債務者に対して監督管理を行う必要がない。

    深圳では「誠実で不幸な債務者」を保護する個人破産制度を正式に司法実務に取り入れた。その他の省・市ないし全土でも個人破産制度の推進が見込まれる。

    現時点では、『深圳経済特区個人破産条例』を踏まえた上で、その他の省・市ないし将来の全土の個人破産の規定を推測し、取引において一定の予防策を講じることができると思われる。

    「個人破産」の適用対象者は、通常、特定条件を満たす自然人(債務者)に限定される。特定条件は2つある。その一つは、自然人の範囲である。例えば、深圳市では「深圳経済特区に居住し、かつ3年連続で深圳社会保険に加入した自然人」を「個人破産」の適用対象者としている。従って、取引相手方又は担保人が自然人である場合、企業は当該自然人の戸籍所在地又は常駐地における個人破産に係る地方規定の有無を事前に確認しておき、かつそれを取引における信用等級評価の要素とすべきである。もう一つは、債務状況である。「個人破産」は全ての債務超過に陥った自然人に適用されるわけではなく、通常、生産経営、生活消費により債務弁済能力を喪失した、又は債務超過に陥った自然人に限定される。

    「個人破産」手続は主に、申請・受理、財産の申告・免除、債権申告、破産費用・共益債務の処理などを含み、その結果は、破産清算、再生、和解の3つに分けられる。その区別は、以下の通りである。

    (1)破産清算とは、債務者と債権者との借金「割引減額」合意にもとづき、割引として減額される借金は帳消しとなり、債務者に対して一定の免責考察期間を設定することを指す。『深圳経済特区個人破産条例』によると、免責考察期間は3年とし、債務者が自発的に行う残余債務の返済割合に応じて、免責考察期を短縮することができる。また債務者が制限行為決定に定められた義務に違反するような状況では、それに応じて免責考察期を延長することもできる。この場合、延長期間は最長2年を超えない。

    (2)破産再生とは、債務者と債権者との借金「割引減額」合意にもとづき、債務者が割引後の借金返済に対して返済計画を立てることを指す。再生期間は6か月を超えない。

    (3)破産和解とは、債務者と債権者が返済方式に合意することを指す。双方が和解協議書に合意しない場合は、破産清算又は再生手続に直接移行するのではなく、やはり債務者又は債権者の申請に応じて開始する。