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    被告が株主、法定代表者を変更した場合は、原告は勝訴してもお手上げとなるのか?

    Y社が借金を返済しないため、T社はやむを得ずY社を訴えた。Y社の株主である陳さんは出資金30万元の払込を引き受けたが、実際に払い込んではいない。訴訟手続中に、陳さんはその保有するY社の持分をH社に譲渡した。判決が下された後、Y社は履行を拒否したため、T社は強制執行を申し立てた。しかしその後、執行の対象となるY社名義の財産がなく、かつH社も多額の負債を抱え、信用喪失人員となっていることに気づいた。T社の勝訴判決は一枚の反故に成り果てるしかないのか?

    実はT社は手の施しようがないわけではない。

    『民事執行における当事者の変更・追加の若干問題に関する最高人民法院の規定』第19条には、「執行債務者である会社が債務超過により、財産をもって法律文書で確定された債務を弁済できず、その株主が法に従い出資義務を履行せずに持分を譲渡した場合、執行申立者が、元株主又は会社法の規定に従い出資に連帯責任を負う発起人を執行債務者とし、未出資の範囲内で責任を負わせるように変更・追加を申し立てる場合は、人民法院は当該請求を認める。」と規定している。当該規定により、本件において株主の陳さんが法の下で出資義務を履行せずに持分を譲渡したtあめ、T社は陳さんを執行債務者として追加することの申し立てができると言える。

    しかし実務規則はそう簡単にはいかない。2つの判例を挙げてみよう。(2021)京02民終10256号判決において、北京第二中級法院は、「払込を満了日以前に、元株主は持分を譲渡した。会社株主の出資期間の利益は法により保護を受ける。元株主が出資期限到来前に持分を譲渡することは、法に従い出資義務を履行しない状況に該当しないため、元株主を執行債務者として追加することができない。」と認定した。(2022)蘇02執異1号案件において、無錫中級法院は、「執行過程で第三者を執行債務者として追加することは、法律文書に対する既判力拡張に該当し、追加される者の実体的権利に係わる。執行に関する法律、司法解釈の規定に従い、相応の法定要件を満たしているか否かを厳格に審査するべきである。元株主が持分を譲渡するときに、払込を受ける期限が到来しておらず、かつ債務も発生していないため、元株主を執行債務者として追加することは法令に合致しない。」と指摘した。

    以下の2つの状況では、元株主を執行債務者として直接追加する方法は認められない可能性がある。1、所定の出資払込期限が到来していない場合、通常、株主が「法に従い出資義務を履行する」時期になっていないと看做される。2、元株主が持分を譲渡するときに、債務が発生していない場合は、通常、債務は元株主と無関係だと看做される。

    本件においては、結果T社の「元株主の陳さんを執行債務者として追加する」という請求は裁判所に認められた( (2021)粤01民終27553号)。T社とY社の債務紛争は、陳さんの持分譲渡前に既に発生しており、訴訟にまで及んだ。陳さんは、Y社が債務を弁済しておらず、かつ執行を別途申し立てられたことを知っている、又は知っているべきであるにもかかわらず、出資を払い込んでいない状況下で、持分を弁済能力を有しないH社に譲渡し、これによって、Y社は債務を弁済できなくなった。裁判所は、「陳さんは持分譲渡前に払込を受けた出資を実際に払い込み、Y社の債務に対して未出資の責任を負うべきである。」と認定した。従って、執行申立者は、元株主が悪意をもって結託し、譲渡を行い、故意に重要な事実を隠し、株主の出資期限を濫用し、不実の出資を行ったことなどを証明できる場合、元株主に対して、持分譲渡前に払込を受けた出資を実際に払い込むよう要求することができる。また、元株主も相応の責任を負うべきである。

    実務において、被告の法定代表者は敗訴になり高額消費制限対象者名簿に記載されないように、訴訟において法定代表者を変更するケースも少なくない。

    司法機関の観点は統一的である。最高人民法院(2017)最高法執复73号には、「被告会社は執行根拠が確定された後、立件され執行される前に、法定代表者を変更した場合、裁判所の執行手続の推進を保証し、債権者の合法的な権益を保護するために、元法定代表者を主要な責任者と認定し、依然として元法定代表者に対して高額消費制限などの措置を講じることができる。」と指摘されている。一部の地方司法機関も明文化しており、例えば、江蘇高級裁判所2018年公布の『会社を執行債務者とする案件にする財産調査の強化に関する通知』には、「本件債務が発生する時点での法定代表者は裁判所にて財産調査を受けなければならない。」と規定されている。従って、通常、裁判所は、債務発生時点での法定代表者の状況を厳格に審査し、法定代表者変更の正当性を判断する。言い換えると、被告にとって、訴訟において法定代表者を変更する行為は、実際に役に立たない。

    原告にとって、もう一つ考えられる予防措置がある。『民事訴訟法』第103条第1項には、「人民法院は、当事者の一方の行為又はその他の事由によって、判決が執行困難となり、又は当事者に対してその他の損害をもたらす事件に対して、相手方当事者の申立に基づいて、財産保全の裁定を下し、特定の行為を命令又は禁止することができる。…」と規定している。従って、原告は訴訟において、必要に応じて被告による法定代表者の変更を禁止する旨の行為保全命令を申し立てることができる。但し、この場合は、原告は必要かつ十分な証拠の提出を求められる。