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    会社のチームビルディング研修で従業員の家族が事故に遭った場合、責任は誰が負うか?

    A社は従業員の帰属意識と団結力を高めるために、従業員とその家族を連れて社員旅行に行った。会食時に従業員Bの家族と従業員Cの家族は飲み比べ対決を始め、その後従業員Bの家族がホテルのプールで溺死した。関連責任の所在について、意見が一致しない。従業員Bは、「A社、従業員Cの家族、ホテルに責任がある」と主張した。A社については旅行の主催者であるので、旅行に参加する従業員及びその家族の安全に責任を負うべきである。従業員Cの家族については、飲み比べ対決をしなければ、従業員Bの家族は泳ぎに行かなかった可能性があり、溺死することもなかった。ホテルに対しては、プールの管理方法に不備があり、飲酒後の水泳を許可した上に、事故発生後も直ちに妥当な救急措置を実施しなかったというのが、従業員Bが、A社、従業員Cの家族、ホテルそれぞれも責任があると主張する理由だ。これに対して、A社、従業員Cの家族、ホテルも理由を挙げて「責任は負わない(と主張した。

    本件は「危険引受け」、安全配慮義務、第三者による権利侵害に係わり、責任認定は比較的複雑な案件である。そのため、法的根拠と事実を踏まえて判断するべきである。

    『民法典』第1176条には、「自らの意思で一定のリスクを有する文化スポーツ活動に参加し、他の参加者の行為によって損害を受けた場合は、損害を受けた者は他の参加者にて権利侵害責任を負う請求をしてはならない。但し、損害の発生について他の参加者に故意又は重大な過失がある場合を除く。活動主催者の責任は本法第1198条ないし第1201条の規定の適用を受ける。」と規定している。

    上述の規定によると、下記の条件を同時に満たす場合のみ、被害者は自ら責任を負うことになる。(1)被害者が自らの意思で活動に参加する。(2)一定のリスクを有する文化スポーツ活動であることを参加前に認識していた。(3)損害の発生について他の参加者故意又は重大な過失がない。(4)関連場所の経営者、活動主催者が相応の安全配慮義務を尽くしている。

    本件において従業員Bの家族は完全な民事行為能力を有する成年者であり、注意義務があるので、飲み比べ対決及び飲酒後の水泳がもたらす結果に対して相応の責任を負うべきである。従業員Cの家族が責任を負うか否かは上述の(3)の判断によって決められ、A社、ホテルが責任を負うか否かは上述の(4)の判断によって決められる。

    まず、『民法典』第1165条の権利侵害の関連規定によると、従業員Cの家族は相手がお酒を飲めない、又は過剰摂取であることを知っていながらもお酒を強制的に勧めた場合、一定の割合で損害賠償責任を負うと認定される可能性がある。

    次に、安全配慮義務については、『民法典』第1198条には、「ホテル……等の経営場所、公共の場所の経営者、管理者又は大衆的活動の主催者が安全配慮義務を尽くさず、他人に損害を与えた場合は、権利侵害責任を負う。第三者の行為により他人に損害を与えた場合は、第三者が権利侵害責任を負う。経営者、管理者又は主催主催者は補充責任を負った後に、第三者に求償することができる。」と規定している。

    法律では状況に応じて、それぞれの安全配慮の範囲を定めるのは不可能であるため、個別案件ごとに判断すべきである。裁判官は本件のような案件を審理するときに、まず損害事実の存否を確定し、ひいては損害発生の原因を認定する。損害が1つもしくは1つ以上の作為又は不作為なものに起因すると結論を下した後、当該行為が安全配慮義務の範囲内であるか否かを判断する。この場合に、安全配慮義務の合理的な範囲をいかに確定するかは裁判官が直面する問題となる [1]

    通常、裁判官は経営者、主催者が理性的かつ合理的に関連リスクを予見できるか否かによって、安全配慮義務の範囲を確定する。主に考慮のポイントとなる点は、関連法令、業界基準、双方間の約定などの有無である。法令で明確な規定がない状況下では、安全配慮義務者は同種の経営者、活動主催者と同程度の注意を払うべきである。又、主催者の実力及び客観的環境による制限も裁判官の考慮要素になる。

    本件において主催者であるA社は関連通知において活動のスケジュール、強度、注意事項(例えば、会食において飲みすぎたり、他社にお酒を勧めたりしてはならない)を伝え、活動の紀律(例えば、一緒にお酒を飲む者は関係者が安全な場所まで送り届け、単独で行動しないよう注意する)を強調し、活動のリスク及び責任の負担などを参加者に予め告知した場合、活動のリスクを理性的に認識し、防備したと認定される可能性がある。

    [1] 『群衆性活動主催者安全保障義務の合理範囲確定研究』、中国裁判所ネット、作者:白涛(北京第二中級法院)