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    競業避止補償金の落とし穴

    実務において、使用者と労働者の間で競業避止が約定されるケースは多い。しかし、使用者が競業避止に係る補償を重要視していないことが原因で引き起らされるトラブルや対策に苦慮するケースは少なくない。

    参考のために競業避止補償金の落とし穴とリスクについて整理しておく。

    • 落とし穴①:競業避止補償金の具体的な金額が約定されていない。

    分析:競業避止補償金の具体的な金額を約定していない場合でも、競業避止に関連する約定は無効にはならない。具体的な金額は司法機関が認定する。

    『労働争議案件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(四)』(法釈〔2013〕4号)第6条(既に廃止)及び新しく実施された『労働争議案件の審理における法律適用の問題に関する最高人民法院の解釈(一)』(法釈〔2020〕26号)第36条では、「労働者の労働契約解除又は契約満了前12カ月間の平均賃金の30%」、かつ「契約履行地の最低賃金基準を下回ってはならない」という基準が定められている。従って、使用者の所在省・市に相応の地方規定がない場合に、通常、司法機関は「労働者の労働契約解除又は契約満了前の12カ月間の平均賃金の30%、かつ当地の最低賃金を下回らない」ことを基準とする。

    使用者の所在地に相応の地方規定がある場合、通常、司法機関は地方規定を基準にする。例えば、『江蘇省労働契約条例』では「月給の3分の1を下回らない」ことを定めている。『深セン経済特区企業技術秘密保護条例』では、「退職前12か月間の平均給与の2分の1を下回らない」ことを定めている。『寧波市企業技術秘密保護条例』では、「退職直前1年間の年収の2分の1を下回らない」ことを定めている。従って、使用者は所在地の地方規定の有無に注意を払うべきである。

    • 落とし穴②:約定された競業避止補償金が低すぎる。

    現行の法令又は司法解釈において、約定された競業避止補償金があまりにも低い場合は、競業避止約定自体が有効であるか否か、いかに対処するかなどが明確にされていない。実務において、通常、約定された競業避止補償金が低すぎることを理由に、競業避止約定自体が無効と認定されることはない。一部の地方規定、例えば、浙江省高級人民法院民一廷と浙江省労働人事争議仲裁院が共同で公布した『労働争議案件の審理における若干問題に関する解答(三)』では、「補償金が低い場合も、競業避止約定自体の効力は影響を受けない」ことを指摘した。各地の関連裁判文書においても同じ観点が示されている。

    又、不足分について、『深セン経済特区企業技術秘密保護条例』のように一部の地方規定では、補足給付が必要と規定されているところもある。その他の地方では、一般的に裁判において不足分の補足給付を認めている。

    • 落とし穴③:労働者の退職後、使用者が補償金を支払わない。

    使用者が3か月以上、補償金を支払わない場合は、競業避止に関連する約定が依然効力を持つのかについては不確定性がある。

    法釈〔2020〕26号第38条では、「使用者の都合で補償金が退職後3か月を経過しても支払われない場合は、労働者は競業避止関連約定の解除を請求することができる。」ことが定められているだけである。労働者が競業避止関連約定の解除を請求しない場合は、競業避止義務が継続的に履行されるか否かについては明確にしていない。司法実務において、「使用者が補償金を支払わない場合も、競業避止義務は自動的に効力を失うことはない」という観点を認める傾向がある( (2021)蘇05民終1864号、 (2019)滬02民終7553号、(2020)京01民終755号等)。

    但し、当該観点を認めない地方規定もある。例えば、『江蘇省高級人民裁判所による労働紛争案件審理ガイドライン』第13条では、使用者が約定通りに補償金を支払わない場合は、係る約定は労働者に対して拘束力がないと定めている。

    又、2020年7月人力資源・社会保障部と最高人民法院が共同で公布した『第一回労働人事争議典型案例の連合公布に関する通知』における12番目の案例において、使用者が11カ月以上競業避止補償金を支払っていなかったが、正義公正の原則に基づき、仲裁委員会は、「使用者の都合で経済補償金が3カ月以上支払われていない状況で、労働者が競業避止行為を行った場合は、労競業避止約定の解除を要求したと見なされる。労働者に競業避止義務違反による違約金を支払わせるという使用者の主張は認めない。」と認定した。