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    知的財産権侵害案件に謝罪を適用できるか?

     

    T社はE社による商標権侵害を受けたことを理由に訴訟を提起し、「E社が商標権侵害を停止し、損失を賠償するとともに、当地の新聞に謝罪声明を掲載する」ことを請求した。E社による商標権侵害が成立する状況下で、T社の「新聞に謝罪声明を掲載する」という請求は裁判所に認められるだろうか?

    答えは「No」である。『特許法』における特許権侵害行為の責任負担の方式に、謝罪は含まれていない。その理由は、特許権は財産権に該当し、人身の属性を有しないからである。従って、社会通念上、特許権侵害行為は特許権者の営業権又はイメージにマイナスの影響を与えず、謝罪する必要はないとされている。本件((2020)冀知民終127号)について、河北省高級人民法院は上述の事由に基づいて、T社の「新聞に謝罪声明を掲載する」という請求を棄却した。

    本件のようなケースは他にもある。商標権、営業秘密は性質において、通常、単純な財産権と看做されている。従って、『商標法』、『不正競争防止法』においても、謝罪を商標権又は営業秘密侵害による責任負担の方式の一つとされていない。司法実務において、裁判所は権利者の謝罪請求を認めない。例えば、(2019)京0102民初4255号案件において、北京市西城区裁判所は、「登録商標専用権は財産権に該当し、謝罪の救済措置を適用しない。被告に謝罪声明を発表させるという原告の請求は認められない。」と指摘した。

    例外もある。特許、商標、営業秘密侵害案件において、権利侵害者は『不正競争防止法』第11条の「虚偽の事実又は誤解を招く虚偽の情報を捏造、散布する」行為を同時に実施し、権利者の信用、名誉に不利な影響を与えた場合、『不正競争防止法』第23条の「影響を除去する」の責任負担の関連規定により、権利侵害者に謝罪させるという主張は認められる可能性がある。

    但し、著作権は特許権、商標権等とは異なる。『著作権法』第47条、第48条では、謝罪を権利侵害による責任負担の方式の一つとしている。その理由は、著作権には、複製権、実演権などの財産権が含まれるとともに、署名権、翻案権などの人身権も含まれる。権利侵害者による具体的な権利侵害が著作者人身権に係わる場合は、権利者の名誉、イメージなどにマイナスの影響を与える可能性がある。例えば、無断で著作権者の作品を書き換え、不適切な内容を加えた場合、著作権者の名誉などに対する大衆の評価が下がる可能性が高い。このような場合に、権利侵害者に対し「必要な範囲内で事実を明らかにしてマイナスの影響を除去する」よう命令する必要がある。

    司法実務の判決では上述の観点を示している。例えば、(2020)京73民終1708号案件において、北京知的財産権裁判所は、「被告の行為が、柳さんの署名権及び情報ネットワーク伝播権を侵害したため、謝罪及び経済的損害賠償などの権利侵害責任を負うべきである。」と認定した。(2019)京73民終2402号案件において、北京知的財産権裁判所は、「情報ネットワーク伝播権は実質的に著作財産権の範疇に属し、権利侵害者の行為は権利者の経済的にのみ損害をもたらし、権利者の人身権益は侵害していない。愛奇芸(iQiyi、動画配信プラットフォーム)の謝罪請求は合理性にも必要性にも欠け、認められない。」と指摘した。

    従って、知的財産権侵害案件に謝罪を適用できるか否かは、侵害の対象となる権利者の権利の性質によって決められる。当該権利が財産権の範疇に属する場合は、通常、謝罪を適用しないが、当該権利が人身権に係り、権利侵害行為が権利者の名誉などにマイナスの影響を与えた場合は、謝罪の請求は認められる可能性が比較的高い。