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    従業員が他社の監査役を務めることは兼職に該当するか?

        A社は人事マネージャーの陳さんがB社の監査役を務めていることを知り、『就業規則』における兼務禁止規定に違反したことを理由に、陳さんを解雇処分した。陳さんは、「B社との間に労働契約はなく、報酬も受け取っておらず、又監査役は経営管理に関与しないので、兼務に該当しない」と主張し、A社による違法解雇を理由に労働仲裁を提起した。最終的に労働仲裁機関も裁判所は、陳さんの行為が兼務であると認定した。

        兼務に関する法規定は、主に『労働契約法』第39条第(4)号に定められており、即ち、「労働者が同時に他の使用者と労働関係を構築し、本使用者の業務遂行を著しく妨害し、使用者から指摘されても是正を拒否した場合」に、使用者は労働契約を解除することができる。 
      
        司法実務において、「同時に他の使用者と労働関係を構築」というのは、労働契約の締結は要件とせず、また有償?無償を問わず、他の使用者への労務提供行為さえあれば十分に該当する。但し、「本使用者の業務遂行を著しく妨害し、使用者から指摘されても是正を拒否した」という要件を満たさない限り解雇の正当性が認められないので、実務上では、使用者が『労働契約法』第39条第(4)号の規定に基づき一方的に労働契約を解除した後、「本使用者の業務遂行を著しく妨害する」ことを証明できず敗訴になったケースは珍しくない。

        従業員が他社の監査役を務めることに対して、会社は『労働契約法』第39条第(4)号を適用して係る従業員を解雇しようとする場合、監査役の職務範囲が極めて限定されているため、「当社の業務遂行を著しく妨害する」ことを証明するのはほぼ不可能である。

        では、なぜA社が訴訟で勝訴したのか。実は、A社が陳さんを解雇する法的根拠は、『労働契約法』第39条第(2)号(注:「使用者の規則制度に著しく違反する」)である。A社の『就業規則』では、「従業員が直接又は間接に他社の職務を担当し、業務執行に関与する……」など兼務行為に対して明確に禁止していたからである。

        取締役、高級管理職と異なり、監査役の職務は日常の経営に関与しないため、監査役を務めることは兼務に該当するか否かについては、意見が一致しない。

        既存の裁判例から見れば、従業員が他社の監査役を務めている場合は、基本的に兼務と認定される。その理由についてはバラつきが有り、従業員による忠実義務違反を理由とするケースもあれば、時間?体力?精神などの要素を考慮した上で、兼務が必然的に本職の業務を妨害することを理由としたケースもある。さらに、『会社法』第51条(注:「監査役会を設立する場合、監査役会は株主代表及び合理的な割合を占める従業員代表によって構成される」)を適用し、事実と結びあわせて、従業員と他社の間に労働関係が存在すると推定するケースもある。例えば、(2017)鲁0613民初710号事件において、裁判所は、「張は尚会社の監査役であり、尚会社の出資者は1名しかいない。張は出資者ではないので、従業員代表に該当すると見做すべきであり、その行為は兼務に該当すると認定した。

        上記のまとめとして、『労働契約法』第39条第(4)号を適用して従業員の兼務行為に対して処分を行う場合の立証困難を避けるために、使用者は「労働契約」又は社内規則制度において、兼務禁止について明確かつ合理的な規定を行うべきである。