「法務二部」へようこそ
kittykim@hiwayslaw.com
+86 139 1742 1790
  • English
  • 中文
  • 従業員による利益相反行為の防止

    従業員による利益相反行為の防止

        A社のアフターサービスのマネージャーである汪さんの夫はB社を設立、汪さんもB社の出資者となった。A社は、B社と壁紙の取引を行った後、汪さんがA社に対しB社の出資者であることを公言していなかったため、『就業規則』における「従業員は会社の財産を横領し、賄賂を受け取り、又ごまかしをするなど、会社を騙す行為を行ってはならない」という規定に違反したという理由で、汪さんとの労働契約を解除した。汪さんは、A社による労働契約解除は違法であるとして労働仲裁を提起した。

        本件について、裁判所は以下の2点を考慮した上で、最終的に「A社が汪さんとの労働契約を解除することは根拠が不十分で、違法解除に該当する。」と認定した。A社の『就業規則』又は労働契約では、従業員又はその家族がA社と取引を行う場合、事前にA社に報告を行わなければならないことを定めていないため、汪さんはA社を騙したと認定されない。『会社法』における「勝手に本会社と契約を締結したり、取引を行ったりしてはならない」という規定の対象者は、会社の董事及び高級管理職のみに限られる。汪さんはアフターサービスのマネージャーとして、『会社法』における高級管理職に該当しない。

        しかし汪さんの行為は利益相反行為に該当する。利益相反行為とは、従業員の個人利益がその職責又は従業員の身分と相反することを指す。通常、下記の状況に分けられる。(1)社外の雇用による利益相反。例えば、兼職、同業競争など。(2)利害関係者の雇用による利益相反。例えば、親族(配偶、子供、両親、兄弟)の雇用。(3)秘密情報の濫用。例えば、他の企業に対し本企業の営業秘密を漏洩するなど。(4)仕入先との関係。例えば、リベートを受け取るなど。中国『労働契約法』、『会社法』等の法律には、上記の行為に関連する規定がある程度定められているが、企業は実際の状況に応じて、合理的な利益相反行為防止規則制度及び実施メカニズムを構築すべきである。

        全体的に言えば、企業は以下の面において相応の措置を講じることが考えられる。

        第一に、規則制度において利益相反行為及び罰則を明確に定める。具体的に、以下のことが含まれる。利益相反行為の定義を明確化する。効果的な方法としては、具体的な利益相反行為を列挙した上で、包括的規定を定める。利益相反行為を処理する部門又は担当者を指定する。利益相反行為の結果?責任を明確化する。情状の深刻さによって、会社は警告、、降格、労働契約解除などの処分を行う。A社の場合も、利益相反について明確な規定又は約定を定めていれば、違った判決結果がでたのではないかと思われる。

        ところで、本件において、利益相反の約定がないものの、A社は、従業員は『労働法』における労働規律及び職業道徳を遵守する義務があることを理由に労働契約を解除したとしたら、裁判所に認められるかもしれない。 

        特に注意を払うべきことは、企業は規則制度の民主的手続きを重視する、即ち、民主的協議、周知の手続きを徹底し、従業員本人に関連文書に署名させることである。そうすると、企業は、既に周知の手続きを行ったことを証明できる一方、従業員が利益相反行為を知っていながら行ったことをも証明できる。 

        第二に、利益相反報告制度を制定する。例えば、従業員はその本人及び特定関係者の既存又は潜在的な利益相反について適時、事実通り、全面的に報告を行わなければならないなど。利益相反報告制度はリスクの防止に役立ち、企業は実際の状況に応じて、報告義務を履行しない従業員に対し処分を行うこともできる。 

        第三に、内部告発を奨励する。賄賂及びリベートなどの受取は、往々に従業員と第三者の間に密かに行われ、企業が証拠を収集するのは非常に難しい。完備な内部告発システムを構築すれば、同僚が利益相反行為を行っている可能性がある場合や同僚の利益相反行為を発見した従業員が、電話、電子メールなどにより企業の指定部門に告発を行うことができる。