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    会社の持分を担保に借金することのリスクはどこにあるのか?

        朱さんは王さんに対し200万元の借金を申し込んだ。王さんは、朱さんが期限通りに借金を返済できるかについてとても不安だったので、朱さんは、その保有するA社の20%の持分を王さんに名義変更し、期限通りに返済ができない場合は、債権の持分化により、係る持分は直接王さんの所有になると、王さんに約束をした。結局、朱さんは、期限通りに借金を返済できなかった。王さんは朱さんに対し、債権を持分に転換した旨を通知したが、朱さんは「債権の持分化」が流質契約に該当し、法の下、無効であると主張した。

        実務において、持分を担保にとる場合、一般的には『担保法』と『物権法』に基づき、持分を抵当に入れる。関連規定によると、持分を抵当に入れる場合は、行政管理部門にて抵当権の債権質入れ登記を行うものとし、質権者と質権設定者は、「債務履行期間の満了時に、質権設定者が返済できなければ、質物の所有権は質権者の所有になる」という約定を行ってはならならず(流質禁止)、質権者は、減価償却、現金化、競売などの方式により質権を実現するしかない。従って、持分に対する質権の設定について、以下の二つの特徴がある。①持分の所有権移転が発生しない。②流質に関する約定は無効となる。

        本件において、朱さんの持分の所有権が移転されたため、明らかに持分に対する質権設定とは異なる。実は、朱さんのように、債務の履行を保証するために、目的物の所有権を債権者に移転し、債務者が債務を履行した場合は、目的物の所有権が戻されるものの、債務人が債務を履行しない場合は、債務の返済として、目的物を債権者の所有にする担保設定の方法は、民法上の譲渡担保である。

        譲渡担保について、中国の『担保法』、『物権法』等の法律には規定がないため、実務においてその法的効力に議論がある。物権法定主義を根拠として、中国の法律には譲渡担保の関連規定がないことを理由に、譲渡担保の効力を否認する判決((2015)浙民提字第69号、(2014)蘇審三民申字第0411号。両方とも不動産譲渡担保を巡る事件に対する判決)はあるものの、大多数の判決((2010)浙商終字第74号、(2014)閩民終字第360号、最高院(2013)民二終字第33号、(2015)民申字第3620号等。全て持分譲渡担保を巡る事件に対する判決)では、「そのような約定は、法律にも行政法規の強制性規定にも違反しないため、適法かつ有効なものである」と認定した。注意すべきことは、浙江省高級裁判所が二つの事件に対して異なる観点を採ったことは、当該裁判所が担保の目的物によって譲渡担保の効力を判断する傾向によるものあるからだと思われる。

        ところで、持分譲渡担保の約定の効力が認められても、「流質」に関する約定の効力について、司法実務において観点が統一されていない。譲渡担保の歴史的根源から考えれば、そもそも流質禁止を回避するためにできたもので、流質禁止を理由に、債務弁済ができない場合に債務者の持分を債権者の所有にするという約定の効力を否認するべきではないと思われる。仮に著しく不公平だと判断されたとしても、契約法及びその他の規定により是正することができる。但し、既存裁判例から見れば、裁判所によって観点は異なっている。例えば、『人民司法▪案例』2014期第16期で掲載された、ある持分譲渡担保を巡る事件の判決において、江蘇省高級裁判所は、「金銭消費貸借契約における流質条項が無効であるにもかかわらず、当該担保の方法自身は有効である。債務者は、債務を弁済した後、債権者に対し持分の返還を請求する権利を有する。」と指摘した。それとは別に、(2015)遼民二終字第00266号判決では、以下のことを指摘し、流質禁止の持分譲渡担保での適用を否認した。「本件において、持分譲渡協議書は金銭消費貸借契約に係わって締結されたものであり、双方は持分譲渡に関する登記手続きを行ったが、当該協議書は担保の性質を有すると判断した。又、永欣会社が依然として経営管理を行っているため、持分譲渡協議書は流質契約に該当しない。永欣会社は約定通りに返済義務を履行せず、重大な誤解又は不公平などを理由に協議書の取消を請求したが、その主張を証明できる証拠を提供できなかったため、当該請求は認めない。」 更に、(2010)浙商終字第74号判決では、30%の持分に質権を設定したことについて、「返済できない場合に呉○○と林○○が係る持分を直接取得するという約定は、『物権法』における流質禁止の規定に違反し、無効である。」と認定すると同時に、20%の持分譲渡担保について、「銀橋○○が一部の持分を譲渡した目的は、輝恒○○と富春○○との提携枠組み協議書の……履行を保証するために、借金をすることにある。……銀橋○○が持分譲渡に関する約定により取得した新○○会社の20%の持分と、呉○○及び林○○による貸付金の間に対価関係が存在する、という原審裁判所の判断には根拠があり、不合理ではない。」と認定し、即ち、持分譲渡担保において債務者が債務返済義務を履行しない場合に、債権者が担保の持分を取得するという約定の効力を肯定した。

        従って、当事者は、持分を担保に借金することに対して、まず持分を目的として質権を設定するか、それとも持分を譲渡し借金の担保をするかを決める必要がある。持分に質権を設定することと持分譲渡担保は、それぞれの約定内容が異なるべきであるため、混雑してしまうと、約定が無効になり、又は裁判官の判断の混乱を招いたり判断結果に不確実性を引き起こす可能性がある。

        持分に質権を設定することを選択した場合は、法律法令に従い双方の権利義務を明確に約定したうえで、持分質入れ登記を行うべきである。逆に、持分譲渡担保を選択した場合は、明確な法規定がないため、債権者が持分に対する権利の内容や、債務者が債務返済を履行しない場合での担保の実行方法及び手続など、持分譲渡担保に係る双方の権利義務を詳しく約定する必要がある。特に、持分譲渡担保において、流質禁止を適用するか否かについて判断に不確実性があるため、裁判所に認められないリスクを低減させるために、「債務者は債務を返済した後、債権者に対し持分返還を要求できる」ことを約定するとともに、「債務返済期間満了前に、債権者は出資者としての権利を行使しない」ことを約定し、かつ実際に約定の通りに履行するよう勧める。