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    職務発明奨励・報酬約定の合理性

        『特許法実施細則』では、職務発明奨励・報酬について約定優先の原則、つまり、企業が発明者、設計者と職務発明奨励・報酬の方式や金額を約定する、又は法に従い制定した規則制度においてそれを定めた場合は、約定又は規定に従うことを明確にしている。(法に従い制定した規則制度については、民主的協議手続きを行う必要があるため、本質においては、労働契約の補充に該当し、企業と従業員の合意であり、また契約の性質も有する。従って、以下「約定」と総称する)。

        職務発明奨励・報酬紛争事件の増加に伴い、約定がない場合、法定基準に従い奨励・報酬を支払わなければならないリスクが生じるため、それを回避するために、本企業の職務発明奨励・報酬規則を約定、規定する企業が増加している。法律法規では、奨励・報酬約定の内容と限度額に対する制限を設けていないため、多くの企業は職務発明奨励・報酬の基準を任意に定めている。

        しかし、労使間には力関係の不平等が存在するため、公平の原則から、個別の事件において、司法機関は不合理な約定の否定や調整ができる。2015年上海高級裁判所により二審判決を下した、3M会社職務発明報酬紛争事案は、その適例である(詳細は[2014] 滬高民三(知)終字第120号民事判決書を参照する)。

        そこで、一部の企業においては、約定の基準を法定限度額ぎりぎりに設定してさえいれば、不合理と認定されるリスクが低くなるではないか、という疑惑が生じる。

        その答えは「No」である。それぞれの業種が異なり、また業種が同じであっても、企業の経営状況が異なるからである。従って、特定の企業の奨励・報酬約定の合理性は具体的な状況に基づき判断すべきである。

        又、『特許法実施細則』によると、職務発明奨励報酬については、「形式と金額」を約定することができる。

        形式に関しては、法律法規では規定や制限が特にないため、、企業は貨幣以外のその他の形式を採ることができる。この点について、企業は奨励・報酬規則を制定時に、上海高級裁判所『職務発明創造発明者又は設計者奨励、報酬紛争審理手引』に明文化されている、「株式、オプション、昇格、昇給、有給休暇等の形式」を参考にすることができる。

        通常、複数の奨励・報酬形式は、単一の貨幣形式と比べれば、不合理であると認定される可能性が少ないと思われる。

        企業がどのような奨励報酬形式を選択するか、又は限度額をいかに確定するかなどは、企業の所属業種の研究開発状況、企業のビジネスモデル、競争地位などの具体的な状況に応じて、総体的に分析、計画する必要がある。特に注意すべきことは、企業が奨励・報酬の金額を計算する時に、業界協会が公布した利益率又は業種内で公認されている利益率に留意することである。約定する金額が正常な範囲を大幅に逸脱する場合は、奨励・報酬の合理性について疑いを招く可能性がある。