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    自社商標が他社に商号として登録された場合の救済手段について

        知名度の高い商標が他社に企業名称として登録されたことにより、商標権と商号権との衝突を引き起こした事件は珍しくない。こういった場合、商標権者は、次のことを検討する必要がある。①他社の商号による自社の商標権侵害の判断基準;②侵害行為に対する救済手段。

        2013 年改正前の『商標法』(以下「旧商標法」という)及び関連規定において、判断基準に関連する規定は不明確で且つ不一致なところがあり、救済措置に関連する規定も曖昧で、商標権者による権利の維持・保護に困難を与えるほか、結果の予測も困難だった。改正後の『商標法』(以下[新商標法」という)では、権利侵害の判断基準及び救済措置について一定の変更が行われた。又、新規定の適用規則は新商標法の実施後に司法実務で確立されると思われる。

        まず、判断基準については、旧商標法第 52 条では、登録商標専有権を侵害する行為について包括的条項(「他人の登録商標専用権にその他の損害を与える場合」)というを規定している。『最高人民法院による商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈』第1条には、「以下の行為は商標法第 52 条第(5)項に規定された他人の登録商標専用権を侵害する行為に属する:(一)他人の登録商標と同一または類似する文字を企業名称とし、関係公衆に誤認を生じさせる可能性があるもの……」と規定している。更に、『最高人民法院による権利衝突に係る知的財産権紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する指導意見(試行)』第7条には、「他人の登録商標標識と同一または類似する商号を同一または類似する商品に目立つ形で使用し、関連公衆の誤認を容易に招く場合には、『最高人民法院の商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈』第1条第(1)項の規定を適用する。」と規定している。上記の点から、商標権者が商標権を侵害されたと主張する前提条件は以下の通りである。商標権を、①登録商標と同一または類似する文字または商号を使用された;②同一または類似する商品に用いられている;③目立つ形で使用されている;④関連公衆の誤認を容易に招く可能性がある。

        しかし、上記の条件を判断する際に、明確な判断基準がないため、条件④以外に、条件③の「目立つ形で使用する」という点は実務において議論がよく発生するポイントとなっている。

        又、注意すべきなのは、サービス商標と著名商標についての特別規定である。元国家工商局商標局による『サービスマークの保護における若干問題に関する意見』第 5 条第(2)項では、「同じもしくは類似しているサービスにおいて、他人のサービスマークと同じもしくは近似した文字をサービス名称として無断で使用し、さらに誤認を生み出すのに足るもの」を「サービスマークの権利侵害行為」と規定している。『著名商標認定と保護規定』第 13 条には、「当事者は、他人が自己の著名商標を企業の名称として登録し、公衆を欺く、又は公衆に誤解を与えるおそれがあると認識するときは、企業名称登録主管機関に、当該企業名称の取消を請求することができる。企業名称登録主管機関は、『企業名称登録管理規定』に従って、処理しなければならない。」と規定している。つまり、サービス商標又は著名商標が他社より名称として使用されることに対して、「目立つ形で使用する」という条件は、要求していない。

        新商標法第 58 条には、「他人の登録商標、未登録の著名商標を企業名称として使用し、公衆に誤解を与え、不当競争行為となった場合は、『中華人民共和国反不当競争法』に従って処理する。」と規定している。新商標法は登録商標及び未登録の著名商標について、「目立つ形で使用する」という条件を要求しておらず、又同一または類似する商品を経営する企業の名称のみを対象とするかどうかについても規定していない。従って、商標権者の立証責任は、ある程度緩められる方向にあり、自社商標を他人の企業名称として使用されることについて責任を追及することに有利に働くと思われる。

        次に、救済手段については、旧商標法第 53 条では、商標専用権侵害について、協議による解決方法以外に、行政処理ルート(注:工商行政部門が処理する)及び訴訟ルートと二つの解決手段を規定している。

        行政処理ルートについては、『商標と企業名称における若干問題の解決に関する意見』第 9 条には、「同一の省レベルの行政地区内で発生した商標と企業名称との衝突事件は、省レベルの工商行政管理局が処理する;省レベルの行政区域を越えて発生した衝突事件は、国家工商行政管理局が処理する。商標専用権の保護を求める事案については、省レベル以上の工商行政管理局の企業登録部門が担当する;企業名称を変更すべき事案については、担当部門は商標管理部門と共同で企業名称登録部門が担当する;企業名称を変更すべき事案については、担当部門は商標管理部門と共同で企業名称登録管理の関連規定に基づき処理を行った後、当該企業名称の批准機関に執行を任せ、国家工商行政管理局商標局と企業登録局に報告し記録する。」と規定している。尚、著名商標について、前述の『著名商標認定と保護規定』の関連規定に基づき、商標権者は企業名称登記主管機関に対し、関連の企業名称登記の取消を請求することができる。

        訴訟ルートについては、『権利衝突に係る知的財産権紛争案件の審理の若干問題に関する指導意見(試行)』の11によると、「人民法院が登録商標権の侵害或いは不正競争行為にあたると認定した企業名称における商号使用に対し、行為者は法により民事責任を負うほかに、人民法院は当該企業名称の変更または使用停止を命じることができる。企業名称の審査登録から五年以後は、権利者が前項の規定に基づき権利を主張しても人民法院はこれを支持しない。但し、行為者の実施した行為が悪意である場合はこの限りでない。」と記されている。つまり、商標権者は訴訟を通じて、法により企業に関連名称を変更させることや使用を停止させることができる。